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[39]緊急提言:コロナ対策は「自宅格差」を踏まえよ

感染も貧困も拡大させない対策を

稲葉剛 立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科特任准教授

2.「自宅」の住環境や通信環境によって子どもの学力格差が拡大するおそれがある

 2月27日、安倍首相は突然、3月2日から全国全ての小学校、中学校、高校、特別支援学校を臨時休校とする、という要請を行った。休校の判断は各自治体に任されることになったが、全国のほとんどの学校が春休みまでの期間、臨時休校となった。

 3月20日、萩生田文科相は全国一斉休校の要請については延長しないとの方針を表明したが、4月以降の状況によっては再度、休校となる可能性も残されている。

 休校によって子どもたちが自宅で過ごす時間が増えたが、ここでも住環境の格差は無視できないと私は考えている。

 東京都と首都大学東京が2016年に実施した「子供の生活実態調査」では、自宅の居住環境と子どもの勉強時間の相関関係が明らかになっている。

 この調査は、都内の4自治体(墨田区・豊島区・調布市・日野市)在住の小学5年生、中学2年生、16~17歳の子どもとその保護者を対象とした大規模調査である。

 その結果によると、16~17歳で自宅の居室が「3室以上」の場合、9割以上が家の中で勉強する場所を持っているが、「2室」の場合は82.2%にとどまっている。民間賃貸住宅に暮らす16~17歳の9.9%が勉強部屋を「持ちたいが、持っていない」と回答している。

 居室の数が少ない住居では子どもの学習時間が少ない傾向にあり、居室の数で「ふだん(月~金曜日)学校の授業以外での1日あたりの学習時間」の状況を見ると、16~17 歳においては、学校の授業以外で勉強を「まったくしない」のは、居室の数が「4 室」、「5 室」、「6 室以上」の場合は約2割であるが、「3 室」では 29.4%、「2室」では 37.8%と高くなっている。

 全校休校により、自宅で過ごす時間が増えることにより、学力の格差がさらに広がることが懸念されている。

 また、狭い自宅で長時間、家族が一緒に過ごすことにより、虐待やDVのリスクが高くなると指摘する専門家もいる。

 全校休校により学童保育の重要性が再確認されたが、ここでも「自宅」以外の場を確保するために場所・人員・予算を振り分ける必要があると言える。

 自宅の設備による格差も存在する。

 全校休校要請を受けて、さまざまな企業やNPOから子どもたちが自宅学習で活用できるオンライン教材を無償提供する、という取り組みが行われた。

 しかし家庭にWi-Fiの環境がない貧困家庭は、こうした教材を活用することが難しい。これも学力格差につながりかねない問題である。

 ICT(情報通信技術)を活用した教育に力を入れている熊本県高森町は、休校対策として町内の全児童生徒445人が遠隔授業を受けられるよう、Wi-Fi環境がない世帯に携帯型のルーターを提供したり、通信環境が不安定な山間部の世帯にインターネット回線の開設工事をしたりするという支援策を実施した。

 他地域でも、こうした通信面での「自宅格差」を解消する取り組みが求められている。

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筆者

稲葉剛

稲葉剛(いなば・つよし) 立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科特任准教授

一般社団法人つくろい東京ファンド代表理事。住まいの貧困に取り組むネットワーク世話人。生活保護問題対策全国会議幹事。 1969年広島県生まれ。1994年より路上生活者の支援活動に関わる。2001年、自立生活サポートセンター・もやいを設立。幅広い生活困窮者への相談・支援活動を展開し、2014年まで理事長を務める。2014年、つくろい東京ファンドを設立し、空き家を活用した低所得者への住宅支援事業に取り組む。著書に『貧困の現場から社会を変える』(堀之内出版)、『鵺の鳴く夜を正しく恐れるために』(エディマン/新宿書房)、『生活保護から考える』(岩波新書)等。

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