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「100日後に死ぬワニ」炎上は本当に「電通案件」ではないのか

広告代理店の側により高度な想像力が要求されている

杉浦由美子 ノンフィクションライター

 イラストレーターのきくちゆうきさんがツイッター上で連載していた「100日後に死ぬワニ」 という四コマ漫画が完結した。タイトルで分かるようにワニが死ぬまでの期間をカウントダウンする四コマ漫画だった。

 ワニは特別なことはしない。アルバイトをしたり、ラーメンを食べたり、恋をしたりする。漫画としてのクオリティの高さや日常感が受け、ツイッター上で注目を浴びた。

 きくちさんのアカウントのフォロワー数は220万人だ。同じくツイッターでの連載から書籍化された人気漫画『先輩がうざい後輩の話』(一迅社)の作者、しろまんたさんのフォロワーは79.1万人だ。こちらも膨大な数だが、その約3倍のフォロワーがきくちさんの漫画「100日後に死ぬワニ」を読んでいた。

意図的にバズらせることはそうはできない

拡大書籍化を告知する「100日後に死ぬワニ」の公式ツイッターアカウント

 ところがだ。最終回の後に、書籍化や映画化などのメディアミックス展開が一気に 発表されると、ネット上の反応はガラッと変わった。

 人気音楽グループ、いきものがかりの新曲と「100日後に死ぬワニ」のコラボレーションの動画もYouTubeで公開された。その動画のクレジットに電通のプランナーの名前があったことから、ネット上では 「電通が最初から仕組んでいた企画だったのか」といった嘆きの声が拡がり、大きな炎上騒動となっていった。

 ネットニュースだけではなく、多くのユーチューバーたちもこの案件を取り上げている。炎上自体も 電通が仕組んだ「炎上商法ではないのか」という説まで出てきた。

 この炎上騒動に対して、作者のきくちさんは、「ワニの話しは自分1人で始めました」(2020年3月22日のツイートより抜粋)と弁明しているが、これは事実だろう 。

 なぜかというと、最初から大資本が入って、ツイッターで意図的にバズらせていくことはそうそうできないからだ。それが可能だったら、広告代理店やテレビ局、出版社も苦労しない。大手企業が得意なのは、コンテンツを作り、それをマスメディアやリアルの売り場で宣伝をしていくという手法だ。資本やコネクションもあるから、マスメディアやリアルの場には強いが、その強みはネットでは通じない。

 反対に、人気ユーチューバーをみていると、個人の工夫やセンスで、登録者を増やし、再生回数を増やしていく。ようはネットでの展開においては、大資本よりも、個人の才覚が勝つことが多い 。ユーチューバーにせよ、ツイッターの漫画にせよ、ネット上で人気者になるためには、「個人が大資本に勝つ」という構図を保つことが重要だが、「100日後に死ぬワニ」はなぜか 最初から大資本がついていたというケチがついてしまったのだ。

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筆者

杉浦由美子

杉浦由美子(すぎうら・ゆみこ) ノンフィクションライター

1970年生まれ。日本大学農獣医学部(現・生物資源科学部)卒業後、会社員や派遣社員などを経て、メタローグ社主催の「書評道場」に投稿していた文章が編集者の目にとまり、2005年から執筆活動を開始。『AERA』『婦人公論』『VOICE』『文藝春秋』などの総合誌でルポルタージュ記事を書き、『腐女子化する世界』『女子校力』『ママの世界はいつも戦争』など単著は現在12冊。

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