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学校の臨時休業があぶり出したことは何か?/下

住田昌治 横浜市立日枝小学校校長

 文部科学省から「新型コロナウイルス感染症に対応した学校再開ガイドライン」が発表された次の日、学校では2019年度の修了式を行いました。3月3日から臨時休校で学校から子ども達の声が消えてから3週間ぶりに子ども達が戻ってきました。と言っても、わずかに3時間弱の時間限定の登校日です。

学校の臨時休業があぶり出したことは何か?/上

どことなく実感の湧かない別れの日

6年生が引き取りに来る荷物

 その3時間の中で、健康観察をし、休み中の様子を聞き、今年度を足早に振り返り、新年度への希望を持たせ、通知表を説明しながら渡し、プリント類を配布しました。そして、テレビ放送での修了式・離退任式と続き、久しぶりの登校はあっという間に終わりました。

 修了式も、例年は体育館に全校児童が集まって、児童代表の言葉や校歌斉唱、春休みの過ごし方の話がありましたが、今年はできませんでした。離退任式も離退任する教職員一人一人から別れの言葉と、代表児童からお礼の言葉、見送りとあったのですが、それも全てできませんでした。子ども達との最後の時間を大切に過ごしたいと思っていた教職員も臨時休業でその時間も奪われ、最後の日にも子ども達の下校の時間に追われ、あわただしく別れを告げていました。

 子ども達の中には、そのことも理解できずに、これまでお世話になった先生が来年度も変わらず学校にいると思っている子もいるということでした。卒業式や修了式という一つの区切りの式は行うことはできましたが、臨時休業中の卒業式も修了式も、教職員にとっても子どもにとっても、突然やってきた別れのような、どことなく実感の湧かないような日になってしまったのかもしれません。

 子ども達の絵画や作文等の作品は事前に担任がまとめて袋に入れておきました。その作品集や学校においてあった荷物を両手いっぱいに持って、いつもと同じように「さよなら、お世話になりました」と、子ども達は笑顔で帰っていきました。学校にいた時間は短かったのですが、久しぶりに友達や先生に会うことができ、教室で過ごすことができた子ども達は、満足げな顔で元気に挨拶してくれました。

 長い休みで、我慢を強いられ、辛い日々を送っていたと思いますが、子ども達は普段と変わらず登校し、キラキラした目で過ごし、下校していきました。子どもが戻ってきた学校の一日は、生き生きした学校になりました。どの学校でも、子どもが登校してくるという当たり前のことに感謝する気持ちになったのではないでしょうか。

 今後、4月6日に入学式、4月7日に2020年度の始業式を行うことが決まっています。しかし、例年とは違い、入学式に参加できるのは、教職員、新入生と保護者1名だけです。これまでは6年生が新入生の案内をしたり、2年生が歓迎の言葉や歌を披露したりしていたのですが、それもできません。

 始業式も修了式と同様、校内放送で行うことになっています。子ども達は、新しい学年、学級で放送を見ながら話を聞いたり、着任した教職員を知り、担任発表を聞くことになります。学校にいられる時間は3時間程度で、教科書配布をしたり、自己紹介をしたり、目標を立てたりします。新年度の大事な初日があっけなく終わってしまうのです。

 そして、4月8日以降のことはまだ決まっていません。学校では、見通しが立たない中で、新年度の準備をしたり、教育計画を立てたりしていかなければなりません。

三つの「密」は教室そのもの

 冒頭で触れた「新型コロナウイルス感染症に対応した学校再開ガイドライン」は、そんな状況の中で発表されました。そこには、基本的な感染症対策の実施と共に、集団感染のリスクへの対応が求められています。これは、学校にだけ求められているのではなく、全ての方に該当することです。

 しかし、学校に当てはめてみると悩ましい内容です。三つの「密」と言われている

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