緊急事態における民主主義の守り方
法的要件はすでに充足されている。「発令しない」という判断は許されない
前田哲兵 弁護士
4月1日、日本医師会の横倉義武会長は、「医療が危機的状況にある」と宣言した。4月3日、日本看護協会の福井トシ子会長も会見を行い、医療崩壊に刻々と近づいていることを憂い、やはり医療現場の切実な状況を訴えた。
現場からの悲痛な訴え

PCR検査のため検体を採取する成田空港の検疫検査場の仮設ブース=2020年4月3日
医療の担い手である医師と看護師。その二つの団体の長が、時を同じくして切迫した現場の状況を訴えたのだ。未だかつて、このような事態があっただろうか。
私自身も、友人である医師に電話をしてみたが、診療所で使うマスクが後1カ月で底をつくという。ある病院では、職員に対するマスクの支給が1人あたり1週間1枚になったという。また、ある介護事業所では、マスクはおろか、アルコール消毒液もなくなりそうだという。彼は、「あとは神に祈るばかりだ」と言った。未だかつて、このような事態があっただろうか。
今、医療や介護の現場が危機的状況にある。4月4日には、都内の感染者数がついに118人となり、3桁を超えた。しかしながら、緊急事態宣言は未だ発令されていない。
前回の論稿(「今こそ「ロックダウン」が必要だ」)では、緊急事態宣言が合憲的に発令可能であることについて述べた。本稿では、緊急事態宣言発令のための法的要件はすでに充足されており、「発令しない」という判断が法的に許されないことを論ずる。