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緊急事態宣言で緊迫する妊娠している女性医師や看護師らの働き方

イギリス、ドイツ、オーストラリアから後れを取る日本のリスク管理

花木奈央 医師、社会健康医学博士

自分が休むと職場に負担をかけると思い欠勤言い出せず

 このような中、首都圏で救急医療に従事する友人の妊娠中の女性救急医から今後の勤務をどうしたらいいか悩んでいる、という声を聞きました。彼女は妊娠が分かったあと職場にそのことを伝えており、これまで感染が疑われる患者さんの診療は避けてきました。医療従事者としてこの危機的状況に貢献したい、という気持ちがある一方で、自分とおなかの中の赤ちゃんや家族を守ることができるのか、という不安な思いを抱えながら、友人は頻度を減らしつつ勤務を継続しています。

 友人の女性救急医と同様の不安を抱えながら、自分が休むと職場に負担をかけると思い欠勤を言い出せず仕事の現場に立ち続けている妊婦さんは、医師・看護師・介護職などの医療従事者のみならず社会機能を維持するための様々な現場に大勢いると思います。

 妊娠中の女性が感染した場合、体への影響や治療については通常の診療以上にわかっていないことが多くあり、妊娠中の女性だけでなく医療従事者も治療に苦慮することが考えられます。

 そもそも妊娠中は免疫状態が変化するため、新型コロナウイルス感染症に限らず肺炎に感染すると重症化するリスクが高まります。妊娠中の女性に対する影響は、妊娠後期(妊娠29週~39週)では感染したとしても経過や重症度は妊娠していない女性と変わらないとされていますが、わかっていないことがまだ多くあります。また、治療薬の候補とされている薬には、妊娠中の服用による胎児(赤ちゃん)への影響などの観点から妊婦への利用が禁忌とされているものもあります。

女性医師どうする拡大スペイン・バルセロナ州バダロナにある図書館が、新型コロナウイルスの感染者を治療する「集中治療室」に変更され、患者を診る医療チームのスタッフたち=2020年4月1日、AP

感染するリスクの高い医療や介護の現場について厚労省要請に言及なし

 現状を踏まえて、日本生殖医学会は2020年4月1日、妊娠したあとの新型コロナウイルス感染症への対応に苦慮することが予想されること、受診や医療行為における新たな感染の発生も危惧されることから、不妊治療のなかで延期が可能なものについては延期を考慮するように、という声明を発表しました。
http://www.jsrm.or.jp/announce/187.pdf

 また、同じ日に厚生労働省からは、正規職員のみならずパートタイム労働者など多様な働きかたで働く人を含め、妊娠中の女性労働者への配慮がなされるよう、妊娠中の女性労働者が休みやすい環境の整備、感染リスクを減らす観点からテレワークや時差通勤の活用、従業員の集団感染の予防のための取り組みを実施について、協力するよう要請が出されました。

 ただ、これらに強制力はなく、協力しなかった際の罰則もありません。また一般労働者よりも感染するリスクの高い医療や介護の現場についての言及はありませんでした。(「職場における新型コロナウイルス感染症の拡大防止に向けた妊娠中の女性労働者等への配慮について要請」https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_10656.html

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筆者

花木奈央

花木奈央(はなき・なお) 医師、社会健康医学博士

日本救急医学会救急科専門医、大阪大学大学院医学系研究科(公衆衛生学)特任助教、NPO法人「Emergency Medicine Alliance」理事 大阪大学院医学部医学科卒業、天理よろづ相談所病院で初期研修、名古屋第二赤十字病院勤務後、京都大学大学院医学系研究科社会健康医学系専攻博士後期課程修了。現在、大阪大学大学院医学系研究科公衆衛生学教室で非常勤教員として研究や教育を行いながら、救急医として救急診療に従事している。

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