「ただの風邪」で初動を誤り、遅れを挽回できない政府・厚労省
2020年04月12日
100年に1度の災厄。新型コロナウイルス関連感染症(COVID-19)の流行は1918年に世界中で猛威を振るったスペイン風邪に匹敵するパンデミックとなった。
安倍晋三首相は4月7日、首相官邸で開かれた新型コロナ対策本部で7都府県を対象に「緊急事態宣言」を行った。当日の記者会見では、「失敗したら、どう責任を取るか?」と問われ、「これは例えば最悪の事態になったとき、私が責任を取ればいいというものではありません」と明言している。
感染拡大によって明らかになったのは、保健医療政策を推進する上での「原理原則」の欠如だった。場当たり的な弥縫策に終始し、責任の所在は不明。一貫性など望むべくもない。最高医療責任者や主席科学顧問の提言に基づき首相が発言する英国とは雲泥の差が見て取れる。
今さらではあるが、まずはCOVID-19の要点を確認しておきたい。正確な情報に基づき、一人一人が自分の頭で考えて行動する──そんな当然のことすらままならない情勢に見えるからだ。
コロナウイルスには7種類ある。そのうち4種類は風邪を引き起こすウイルス。残りの3つがSARS-CoVとMERS-CoV、SARS-CoV-2だ。
▽SARS-CoV
前者はSARS(重症急性呼吸器症候群)の病原体。SARSは2002〜03年にかけて、中国南部を中心にアウトブレイクが発生したことで知られる。
▽MERS-CoV
MERS(中東呼吸器症候群)を引き起こす。MERSは2015年以降、中東や中国・韓国で感染を広げている。
▽SARS-CoV-2
現在流行しているCOVID-19の病原体。当初は2019-nCoVと呼ばれていた。ゲノムの8割はSARS-CoVと同じ。
「SARS-CoV-2はこれまで人の風邪の原因にはなっていなかった新しいタイプのウイルス。恐らくは多くの人が免疫を持っていないと考えられます。感染した人の中には重症化し、最終的には亡くなる方もいる。ここが問題です」
感染症のリスクを測るには2つの基準がある。
一つは「致命割合(CFR:Case Fatality Ratio、またはRisk)」。確定診断がついた患者のうち、その感染が原因で死に至る人の割合だ。
もう一つは「感染致命リスク(IFR: Infection Fatality Risk)。総感染者のうち、その感染が死因となって死に至る人の割合を示す。
メディアでは「致死率」「致命率」といった用語が散見される。だが、定義は必ずしも明確ではない。
神戸大学大学院保健学研究科・教授(パブリックヘルス領域/国際保健学分野)の中澤港氏は自身のウェブサイトで感染症のCFRについて次のようにまとめている。
〈SARSは10%、MERSは35%、スペイン風邪は3%、アジア風邪は0.5%〉
一方、COVID-19の感染が拡大する中、こんな声が少なからず聞かれた。
「毎年冬に北半球で流行する季節性インフルエンザでも高齢者を中心に死亡者は出ている。COVID-19については騒ぎすぎではないか」
中澤氏はサイトでこの「通説」を否定する。
〈誤解されているが季節性インフルエンザの確定診断がついた患者数(推定値)は日本では年間1000万人、直接の死者は2000〜3000人なので、CFRは0.02〜0.03%(分子を関連死も考慮して推定した超過死亡1万人で考える0.1%は誤り。インフルエンザに罹ったら1000人に1人亡くなるとしたら、もっと真剣に対策しているはず)〉
COVID-19のCFRは〈1〜10%(季節性インフルエンザより2けた大きい
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