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日本でコロナによる死者が少ない理由を解明したNスペ

厚労省クラスター対策班にカメラ、押谷東北大教授と西浦北大教授に密着取材

川本裕司 朝日新聞記者

感染症の数理モデルが政府の政策にも影響

 安倍晋三首相が緊急事態宣言を出した7日の記者会見で「人と人との接触を最低7割、極力8割削減を」と呼びかけた論拠となったのは、西浦教授が手がける感染症での数理モデルだった。

 ドイツや英国で研究を重ねた西浦教授は、感染症での数理モデルについて「間違えば10万人の命が失われるかもしれない」という重い助言を受けたことを明らかにした。これまで日本の政策に本格的に導入されていない数理モデルについて、リスクと覚悟をもって取り組んでいる姿が伝わってきた。

 感染爆発した場合の最悪の未来について、押谷教授は「有名な企業が次々と倒産するかもしれない。新しい闇が待っている」という趣旨の発言をした。

 番組では国内での新型コロナウイルス感染の経緯だけでなく、現在地と訪れるかもしれない未来を、一定の説得力をもって伝えた。これまでは誰もが「先のことはまったくわからない」と言っている現状において、特筆すべき報道だった。情報番組などのコメンテーターの強い口調での警告や激論が空回りしているのではと思えるように、押谷教授と西浦教授は静かなたたずまいで落ち着いた口ぶりで言葉を発していた。

 今回のNスペを除けば、NHKも民放もニュース番組では感染者数の増加、政府や自治体の対策を報じることに力点を置いてきた。緊急事態宣言のあとは、人影がまばらになった繁華街の映像を流す点で変わりはない。12日夕の日本テレビ「真相報道バンキシャ!」で買い物客が詰めかけて行列ができた仲宿商店街(東京都板橋区)や戸越銀座商店街(同品川区)の様子を伝えたものなどを除けば、「売り上げが減って大変だ」という商店主の嘆きのオンパレードといっていい。

 今後、Nスペに望む続編は、国内での感染の推移と対策の追跡だ。さらに、欧米でこれほど死者が増えているのに中国を除けばアジアでは比較的少ないのはなぜか、ということの解明だ。また、日本でもお手本にすべきだという声が多いCDC(米疾病対策センター)がありながら、米国で最大の死者を出したのかという検証にも期待したい。

 Nスペ「新型コロナウイルス 瀬戸際の攻防」は、NHK総合で16日午前0時50分から再放送される。

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筆者

川本裕司

川本裕司(かわもと・ひろし) 朝日新聞記者

朝日新聞記者。1959年生まれ。81年入社。学芸部、社会部などを経て、2006年から放送、通信、新聞などメディアを担当する編集委員などを歴任。著書に『変容するNHK』『テレビが映し出した平成という時代』『ニューメディア「誤算」の構造』。

 

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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