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新型コロナ感染症とメンタルヘルス・ケア 8つのポイント

もう一つの危機に向き合う

前田正治 福島県立医科大学教授

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が武漢で問題となってから、もう4カ月以上経過した。感染者数は爆発的に増え、感染の舞台も東アジアからヨーロッパやアメリカ大陸へと瞬く間に広がっていった。わが国においてもついに緊急事態宣言が発動され、この数週間はニュース番組の半分以上をこの感染症ニュースが占めるようになった。

新型コロナウイルス感染症とメンタルヘルスの危機

拡大飲食店のシャッターに掲げられた、休業を知らせる貼り紙。「生きていれば、色々あります」と書かれていた=2020年4月11日、東京・赤羽

 多くの人はこの未知の疾患に怯え、むしろ愕然とした思いでこの事態を迎えていることだと思う。ただこうしたニュースの大半は、感染症の直接リスク、感染率や致死率、あるいはその予防法に費やされている。

 どのようにしてこの感染症から自分の身や家族を守るか、それが最大の関心事となったし、外出を自粛し、社会的距離を取ることが何よりも大切なこととなった。しかし少し前ならば、人との接触を避け引きこもり続けること、これらはネガティブで不健康な行為であり、メンタルヘルス上は避けるべき事柄とみなされていた。

 精神科医としてはジレンマではあるが、現在こうしたメンタルヘルス上不健康な行為が推奨され、むしろ社会規範とさえなっている。問題は、こうした事態が国や文化を超えて長引いたときに、どのようなメンタルヘルス上の危機がもたらされるのか、我々には経験がないことである。この感染症のパンデミックと同じく未知の領域なのである。

 さて、この感染症が拡散していく過程で、国連の人道支援を行っている諸機関が集まった委員会(機関間常設委員会)IASCが作成したメンタルヘルス・ケア・マニュアルを、つい最近、許可を得て有志とともに翻訳する機会を得た。現在はバージョン1.5であり、IASCのサイトから日本語版をダウンロードできる。

 このマニュアル(正確にはブリーフィング・ノート)から見て取れる、メンタルヘルス上の危機とその対策について、私見を交えながら述べてみたい。

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筆者

前田正治

前田正治(まえだ・まさはる) 福島県立医科大学教授

1960年生まれ。久留米大准教授を経て、2013年から福島県立医科大学医学部災害こころの医学講座主任教授。専門はトラウマ関連障害。ふくしま心のケアセンター副所長も兼ねる。著書に『福島原発事故がもたらしたもの 被災地のメンタルヘルスに何が起きているのか』(誠信書房)。