コロナ緊急対策、政府制度設計はお粗末 「子どもの貧困」危機に拍車
こぼれ落ちる困窮世帯が続出。給付金と児童手当の改善を急げ
小河光治 公益財団法人「あすのば」代表理事
新型コロナウイルスの感染拡大は、9年前の東日本大震災と同様、進学や進級が目前に迫る季節から深刻化した。今回も窮状が悪化し、学業の継続を断念する子どもがたくさん生まれるのではないだろうか。私は、子どもの貧困対策に取り組んできた経験から、2月以降、危機感が増す一方だった。
各地で支援団体が力を尽くす中で、政府は今月7日、ようやく緊急経済対策を決定した。「減収世帯への給付金30万円」と「児童手当の上乗せ」が盛り込まれたものの、内容や手法はあまりにお粗末ではないか。実施に向けて、子どもを抱える困窮家庭の実態に即した制度設計になるよう、できる限りの改善に努めてほしい。
大切なのは、迅速性、一定水準の金額、制度からもれる家庭を出さないこと。そして、何より、利用しやすい仕組みを整えることであろう。

感染症対策で子ども食堂を休止した支援団体がひとり親世帯に食料を無償提供。仕事が減り、休校で食費や光熱費はかさみ、「冷蔵庫が空っぽ」という家庭も=岩手県

緊急事態宣言を出した後、記者会見する安倍晋三首相=4月7日
子どもの未来が閉ざされる寸前だ
子どもたちの境遇を思えば、対応は待ったなしだ。
日々、苦しい生活の中で、子どもたちは進路や可能性が閉ざされる寸前を生きている。そこへ、東日本大震災を超えるといわれる経済の落ち込みがのしかかる。親の多くは非正規雇用で、著しい減収や雇い止めが増えるだろう。
3月からの休校で、昼食代や教材費、マスクなどの支出も増えている。貯金がほとんどない家庭はどうなるか。7日の政府の非常事態宣言を受け、休校がさらに延びる地域が多い。
家庭が安心・安全な場ではない子どもも少なくない。学習とともに、栄養のバランスがとれた給食を子どもたちから奪っている現実も忘れてはならない。
独自の新生活支援策を前倒し実施
私が代表を務める子どもの貧困対策センター「あすのば」は、調査研究に基づく政策提言や、こども食堂などの民間の活動へのサポート、合宿キャンプの実施など、物心両面の支援を続けている公益財団法人である。

貧困のない社会に向け、「あすのば」は、子どもたちへの直接支援や全国の支援団体への研修などのサポートと同時に、法制度の改正を目指して調査研究と政策提言を続けている(筆者提供)

子どもの貧困率は厚生労働省が3年おきに算出している。直近の2015年時点の集計では7人に1人が貧困状態だった。ひとり親家庭に限ると50.8パーセントになり、先進国でもワーストレベルにある
事業の柱の一つが、毎春、入学や就職などで新生活を迎える子どもへの「応援給付金」で、金額は3万円から5万円。生活保護受給世帯や住民税非課税世帯、児童養護施設などから自立する子どもたちが対象だ。
今年度の給付金は、2月からの危機感をもとに、「1日も早く現金が必要になっている」と考えた。実施を2週間ほど前倒して、3月11日までに1900人への送金を終えた。