コロナ緊急対策、政府制度設計はお粗末 「子どもの貧困」危機に拍車
こぼれ落ちる困窮世帯が続出。給付金と児童手当の改善を急げ
小河光治 公益財団法人「あすのば」代表理事
「30万円給付」この手法では救われない
まず、「30万円の現金給付」について。
対象が一定の減収世帯に限られ、世帯単位であることなど、問題が極めて大きい。生活困窮世帯は、そもそも低所得であり、所得の減少で給付対象を絞ってはならない。また、単身世帯もあれば多人数の世帯もあるので、1人あたりにするのが当然ではないか。
このままでは、困窮しているのに対象から漏れたり、複数の子どもがいて1人あたりの金額が細ったりして、救済からこぼれ落ちる世帯が続出するのは確実だ。「1人ごとに一律給付」にしなければ、効果が上がらない。

休校に苦しむ子育て家庭のため、支援に関わるNPOが協力し、児童手当に3万円の緊急上乗せ支給を求めるキャンペーンを3月8日に開始。西村康稔経済再生相に署名を届けた=3月30日(筆者提供
「児童手当は3万円上乗せ」を西村担当相に陳情
「児童手当を1万円上乗せ(1回だけ)」も、子育て世帯にとっては、極めて不十分である。私たち関係団体は、「3万円の上乗せ」を、3月初旬から訴えている。
NPO法人キッズドア理事長の渡辺由美子さんの呼びかけで、認定NPO法人しんぐるまざあず・ふぉーらむ理事長の赤石千衣子さん、内閣府「子供の貧困対策に関する有識者会議」構成員の末冨芳さん(日本大学教授)と「あすのば」代表の私は、児童手当3万円の緊急給付キャンペーン「休校に苦しむ子育て家庭に給付金を支給してください!https://bit.ly/2TR2Vy5」を展開してきた。
3月30日には、西村康稔・経済再生担当相と面会して署名を届け、前向きな検討を表明いただいた。ぜひ3万円に増額してほしい。また、感染拡大の影響が続く限り、増額の継続を検討していただきたい。

緊急事態宣言後の初の週末を迎え、臨時休業中の日本橋三越本店前。周辺店舗も軒並み営業自粛となり、閑散としていた=4月11日、東京都中央区
児童に限らず、高校生以上への支援も不可欠だ。困窮世帯の高校生や学生は、進学や生活のためにアルバイトをせざるを得ないが、親のみならず、子どもたちにも減収や雇い止めが起きている。これらの問題への補償に加え、現金給付も大切だろう。
生活保護受給世帯や住民税非課税世帯の高校生のための国の制度である「高校生等奨学給付金」の受給者にも、3万円の上乗せ給付を実施してほしい。
高等教育の無償化制度、要望実り迅速適用実現
大学生・専門学校生向けには、4月に始まった国の「高等教育の無償化新制度」が、感染拡大による家計急変の場合も速やかに適用されるようになった。これは、「あすのば」の緊急要望を受けて実現したものだ。新制度では、入学金・授業料減免と給付型奨学金を合わせて、最高で年間187万円の返済不要の支援を受けることができる。
また、私立高校や私立大学・専門学校などが独自で入学金・授業料減免措置を行った場合は、国庫補助が適用となる。東日本大震災の被災者対応と同様に、私立学校における独自の措置が一日も早く拡がることを願っている。