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コロナ「緊急事態宣言」で、少女たちに起きていること(上)

深刻化する虐待、少女を狙う大人たち

仁藤夢乃 一般社団法人Colabo代表・社会活動家

現実を知らず、想像できない安倍首相

 非常時には、女性や子どもへの暴力は深刻化するため、国連も「救済措置を」と呼びかけている。

 しかし、安倍首相は緊急事態宣言をした7日の会見で、「海外では、DVが増加しているという状況が出てきているということを私も承知をしておりますが、国内において、まだそういう兆候が出ているということを、私は報告は、今、受けておりません」と発言した。

 民間シェルターによる「全国女性シェルターネット」が3月末に安倍首相らに宛てた要望書でも、支援現場から、実際に新型コロナウィルスの影響で深刻化しているDV被害等の状況について記載されており、4月3日の国会で山添拓議員がこれを取り上げて質問した。それに対して安倍首相は、「政府として、今朝、地方公共団体に対し、DVの相談対応から保護に至るまで、支援の継続的かつ迅速な対応を依頼いたしました」と答弁していた。

 また、日本でもコロナの影響をきっかけに、夫のDVで女性が亡くなる事件も既に起きているにも関わらず、国内ではまだそうした問題が発生していないと発言したのだ。

 これまでにも安倍首相は、市民の生活や、若者の苦しい状況が想像できていないと思わざるを得ない対応を続けていた。例えば、4月1日には新入生、新社会人へのメッセージとしてSNSにこんな投稿をした。

 「感染症が経済社会に甚大な影響を及ぼす中、不安を感じている皆さん。そして大変な困難の中で、今日の日を迎えた方もおられると思います。そうした経験もきっと、皆さんのこれからの人生の中で、大きな財産になる。そして、いつの日にか『あの時は大変だったけど みんなで頑張って乗り越えたなぁ』 そう語り合うことができる日が来るよう、私も全力を尽くしていきます。(略)顔を上げて、前に向かって、人生の新たなスタートをきっていただくよう、期待しています。いっしょに頑張りましょう! 応援しています」

 専門家会議の意見も聞かずに決めた休校要請の根拠も示さず、不安を抱える若い人たちへの説明もしないのに「顔を上げましょう? 笑っちゃうね」と、Colaboのシェアハウスで暮らす高校を卒業したばかりの女性も、あきれていた。そしてこの日、首相はマスク二枚を全住所に配布することを発表した。

 私も、首相のこの対応には、声を出して笑ってしまったが、そのあと虚しくなり、怒りで震えた。笑えてくるのは、あまりにも私たちのことを考えていない、大切にする気がないということを心の底から感じて傷ついたからだろう。ゾッとして、具合が悪くなる。

 何が必要か、想像できない無知な人たちが権力を握っている。それも、自らの立場を守るためには、堂々と嘘をつき、もりかけ問題、桜を見る会、IR汚職などについても説明をしない、そして、公文書改ざんをさせられたことを苦にして絶たれたという人の命があっても、平然と無視できるような人たちが。

安倍晋三首相が、星野源さん(左)の動画にあわせて自宅でくつろぐ様子をツイートした。首相のツイッターから拡大安倍晋三首相が、星野源さん(左)の動画にあわせて自宅でくつろぐ様子をツイートした。首相のツイッターから

 ウィルスの恐怖以上に政府の対応から、ますます不安が広がっている。

 虚しくて、怒りを感じられない人もいるだろう。怒れる人は怒ろう。精神論で乗り切れる状況ではないし、耐えることを美談としてはいけない。苦しいときは、苦しいと言っていい、耐える必要はない。

 さらに、安倍首相は4月12日、星野源さんがSNS上で公開した「うちで踊ろう」という動画に便乗し、自身が自宅のソファーで犬を抱き、優雅にコーヒーを飲んだり、本を読んだり、テレビを眺めたりする様子を撮影した動画を投稿した。そこには、「友達と会えない。飲み会もできない。ただ、皆さんのこうした行動によって、多くの命が確実に救われています」というコメントが添えられていた。

 この動画にはすでに批判が殺到しているが、今日も荒れた天気の中、家にいられず、ネットカフェも追い出されて、行き場を失くした人が溢れているのに、職を失い、住むところを失い、暴力から逃れる場所のない人々の命が奪われそうになっているのに、こんな姿を見せて、何をしたいのだろうか。

 政府の対応からは、そうした人々への目線は感じられない。

「コロナ『緊急事態宣言』で、少女たちに起きていること(下)」は16日夕、公開する予定です。

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筆者

仁藤夢乃

仁藤夢乃(にとうゆめの) 一般社団法人Colabo代表・社会活動家

1989年生まれ。中高時代に街をさまよう生活を送った経験から、10代女性を支える活動にとりくむ。夜の街でのアウトリーチ、無料カフェの開催、シェルターでの保護や宿泊支援、シェアハウスでの住まいの提供などを行っている。第30期東京都「青少年問題協議会」委員。厚生労働省「困難な問題を抱える女性への支援のあり方に関する検討会」構成員を務めた。著書に『難民高校生』(英治出版)、『女子高生の裏社会』(光文社新書)など。 Twitter @colabo_yumeno  FB https://www.facebook.com/yumenyan

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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