田中駿介(たなかしゅんすけ) 東京大学大学院総合文化研究科 国際社会科学専攻
1997年、北海道旭川市生まれ。かつて「土人部落」と呼ばれた地で中学時代を過ごし、社会問題に目覚める。高校時代、政治について考える勉強合宿を企画。専攻は政治学。慶大「小泉信三賞」、中央公論論文賞・優秀賞を受賞。twitter: @tanakashunsuk
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
「大学の危機」をどう乗り越えるか、渦中からの訴え(下)
大学が、危機に瀕している。新型コロナウイルスの感染拡大に伴って、今まで、多くの人が直視してこなかった「格差」が、一気に露呈したのである。本稿では、(上)を公開した4月11日以降の状況の変化も報告しながら、学生と学問を守り、問題解決を図るための提言を行いたい。
(上)を公開した時点と比して、学生をとりまく情勢は大きく変化した。
そのひとつが、「緊急事態宣言」を受けて、ほとんどのカフェ・飲食店などが閉店を余儀なくされていることである。
オンライン授業を、WiFiのあるカフェやコンビニのイートインスペースで受講する選択肢は、ほぼ消えてしまった。当初は、自宅にWiFiがないと、自宅外で受講するのにお金がかかるうえに、快適な学習環境が確保できないことが懸念されていた。だが、今や文字通り「詰む」ことになったのだ。
それだけではない。あらゆる業種でアルバイトが「休業」状態に追い込まれた。筆者の周囲からも悲痛な声が聞こえてくる。
「貯金を崩して、生活しています。このままでは、5月までしかお金はもたない」
都内の女子大に通うある学生は、ガールズバーで働きながら、家賃や食費を含む生活費を捻出しているという。学費のみ親が負担しているというが、生活費に充てられる仕送りはない。しかし、「緊急事態宣言」を受けてバイト先は閉店し、収入はゼロになったという。しかも自宅にはWiFi設備はないのに、用意するよう大学から一方的に告知されたそうだ。
「マスク2枚もらっても、何になる」と話す彼女は、「要請するなら補償しろ」と政府に訴えるデモに参加した。夜の街で働く同世代の友人の呼びかけに共感したからだ。しかし、いまだに世間的には、夜職へのイメージは決して良くはない。東京都が地下鉄の駅などに掲示するポスターでも、通勤電車の危険性には触れられていない一方、「夜の街での集団感染」への注意喚起がされている。
「ネットをみても、自己責任論の非難の矛先が私たちに向いているのが、本当に悲しい」
まだ上京1年目の彼女は、そう嘆いている。
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