「大学の危機」をどう乗り越えるか、渦中からの訴え(下)
2020年04月19日
大学が、危機に瀕している。新型コロナウイルスの感染拡大に伴って、今まで、多くの人が直視してこなかった「格差」が、一気に露呈したのである。本稿では、(上)を公開した4月11日以降の状況の変化も報告しながら、学生と学問を守り、問題解決を図るための提言を行いたい。
(上)を公開した時点と比して、学生をとりまく情勢は大きく変化した。
そのひとつが、「緊急事態宣言」を受けて、ほとんどのカフェ・飲食店などが閉店を余儀なくされていることである。
オンライン授業を、WiFiのあるカフェやコンビニのイートインスペースで受講する選択肢は、ほぼ消えてしまった。当初は、自宅にWiFiがないと、自宅外で受講するのにお金がかかるうえに、快適な学習環境が確保できないことが懸念されていた。だが、今や文字通り「詰む」ことになったのだ。
それだけではない。あらゆる業種でアルバイトが「休業」状態に追い込まれた。筆者の周囲からも悲痛な声が聞こえてくる。
「貯金を崩して、生活しています。このままでは、5月までしかお金はもたない」
都内の女子大に通うある学生は、ガールズバーで働きながら、家賃や食費を含む生活費を捻出しているという。学費のみ親が負担しているというが、生活費に充てられる仕送りはない。しかし、「緊急事態宣言」を受けてバイト先は閉店し、収入はゼロになったという。しかも自宅にはWiFi設備はないのに、用意するよう大学から一方的に告知されたそうだ。
「マスク2枚もらっても、何になる」と話す彼女は、「要請するなら補償しろ」と政府に訴えるデモに参加した。夜の街で働く同世代の友人の呼びかけに共感したからだ。しかし、いまだに世間的には、夜職へのイメージは決して良くはない。東京都が地下鉄の駅などに掲示するポスターでも、通勤電車の危険性には触れられていない一方、「夜の街での集団感染」への注意喚起がされている。
「ネットをみても、自己責任論の非難の矛先が私たちに向いているのが、本当に悲しい」
まだ上京1年目の彼女は、そう嘆いている。
北海道の、ある短大に通う女子学生も悲痛な声を上げる。
彼女の場合は、実家暮らしだが、学費をアルバイトで賄っているという。アルバイトをしている飲食店は実質「開店休業」状態で、しかも親も仕事が減っている。そんななか、学校のガイダンスで通知されたのが、「アルバイトを自粛してください」という要請である。
このままでは、学費を払えなくなる。しかし、ゼミの先生に相談をしても十分に取り合ってはくれなかった。
「勉強をしたくなくて、アルバイトをしたいと言っているわけではない。苦しい状況を理解してくれない」と彼女は憤る。
政府は、減収世帯に30万円を給付する方針を打ち出し、のちに1人10万円の給付に転じた。
この「30万円給付」は、その対象が狭いという指摘があったが、本稿の主題とそれるので詳しくは立ち入らない。ところで、あまり報道では指摘されていないが、一人暮らしをしている学生が世帯主となっている場合、多くはこの条件を満たす可能性があった。
ただし、そこにも「落とし穴」がある。
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