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長い活動休止でスポーツはどう守られるか

試合の延期、無期限の活動休止から補償問題のステージへ

増島みどり スポーツライター

レイオフ制度でしのぐスペインリーグ、ドイツはプロよりアマチュア救済へ

 世界のサッカーリーグで、1試合平均で4万2000人以上と、唯一4万人を突破する観客動員数(18年欧州プロサッカー連盟発表)を誇るドイツ「ブンデスリーガ」は、ドイツ政府が感染拡大防止に8月31日まで全ての大規模イベントを禁止する決定をしたため、5月再開プランに新たなハードルが立ちはだかっている。

 ブンデスリーガの収入源の柱であるチケット売り上げが打撃を受けるなか、今後は無観客試合の開催を模索していく方針を固めている。無観客でも開催を検討する理由は今シーズン4期目の分配が予定される放映権料にある。ブンデスでは放映料は各クラブの成績を加味して配分され、この金額がクラブ経営上、担保にあてられているケースもあるという。4期目の支払いがない場合、破産する可能性のあるクラブがすでに存在するため、無観客でも再開したい意向だ。

 3月31日に行われた同リーグのビデオ会議では1、2部36クラブ中13クラブが経営危機にあると報告され、もし放送料の支払いがなかった場合、2部7クラブは5月末に破産する可能性があると、深刻な財務状況が明かされた。

 すでにトップクラブの「バイエルン」では、選手が20%の報酬を辞退しクラブを守る行動に出ているが、ドイツ内務省は「クラブ救済の連邦予算はない」(インターネットメディアのインタビューでツェシュネ内務省広報)と態度を明確に。クラブは基本的には自前の資金で補償を行う形だ。

 ドイツではむしろ、会員費や利用費で運営される各地域に根付いた民間スポーツクラブの破産が問題になっている。ドイツサッカー協会は4月4日に、「国や自治体の支援がなければ多くのスポーツクラブが生き残れない」(コッホ副会長)と危機感を露わにした。

 自治体独自のスポーツに対する取り組みは一部ですでに始まっている。日本人も多く滞在するデュッセルドルフを持つノルトライン=ヴェストファーレン州では、スポーツ全体の支援に総額1000万ユーロ(約11億7000万円)が用意され、従業員数に応じ、支援金が配分されるなど、困窮するクラブを支えようと動く。

 スペイン「ラ・リーガ」では、FCバルセロナの選手が70%の報酬カットに応じるなどしたが、レアルマドリード、アトレチコマドリードといったビッグクラブの経営状態とは違い、1部でも、かつて中村俊輔(横浜FC)が所属した「エスパニョール」、乾貴士(エイバル)が19年に在籍した「アラベス」で経営危機は深刻な状態と伝えられる。スペインは、今のところクラブも「ERTE」(エルタ)=レイオフ制度の申請で、国の一時支援を受けている。雇用を守るために一時解雇とし、その間、規模、職種に応じて約70%の給与を維持し、しのぐ形だ。

 スペインと同じく感染が拡大し医療崩壊が起きたイタリアでは、イタリアサッカー連盟のグラヴィーナ会長が政府に対し、5月31日までの税金の支払いと国営スポーツ施設のレンタル代の支払い免除、クラブスタッフへの手当金として600ユーロ(約7万円)を求める要望を提出した。感染拡大とともにこれら支援の実現は据え置かれたまま、5月末にカップ戦からスタートする案で検討を始めたと伝えられる。医療専門家を招き、選手のウイルス検査体制を整備する部門を設け、そこに政府とリーグが投資し再開を模索する。

 米国では大リーグ、NBAなど主要なプロスポーツ全体で約5400億円の損失が試算される(米経済誌フォーブス電子版)。トランプ大統領は経済活動の早期再開を16日に宣言しており、中でも「オープン・アワ・カントリー」と名付けた諮問委員会での提案は米社会でのスポーツの存在を明確に示すものだろう。メジャーリーグ、NBA、NFL、プロレス団体のUFCなど、主要なプロスポーツ全ての団体の首脳と会談し、「プロスポーツにおけるあらゆる雇用は守られるべきだ。まずは無観客で再開し、次に座席は(ソーシャルディスタンスの維持に)離して、それからコロナウイルスが去って満員にする」(FOXTV)と意向を明らかにした。大統領選対策がこれら発言の一部にあるとしても、経済活動再開に、人々の日常を象徴するスポーツを旗振り役に据えるのは、プロスポーツが生む莫大な経済活動、雇用、人々に与える高揚感を景気回復の材料としていかに重視しているかを表す。具体的な日程は決まっていないが、大リーグは全30球団で、球団、球場従業員らの雇用補償に100万ドル(約1億700万円)の寄付を行った。

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筆者

増島みどり

増島みどり(ますじま・みどり) スポーツライター

1961年生まれ。学習院大卒。84年、日刊スポーツ新聞に入社、アマチュアスポーツ、プロ野球・巨人、サッカーなどを担当し、97年からフリー。88年のソウルを皮切りに夏季、冬季の五輪やサッカーW杯、各競技の世界選手権を現地で取材。98年W杯フランス大会に出場した代表選手のインタビューをまとめた『6月の軌跡』(ミズノスポーツライター賞)、中田英寿のドキュメント『In his Times』、近著の『ゆだねて束ねる――ザッケローニの仕事』など著書多数。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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