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チャット相談から浮かぶ「コロナ緊急事態」下の苦境(上)

居場所を失う「外出せざるを得ない」若者たち

大空幸星 NPOあなたのいばしょ代表・慶應義塾大学総合政策学部生

筆者が代表を務めるNPOあなたのいばしょのホームページ拡大筆者が代表を務めるNPOあなたのいばしょのホームページ

 私が代表を務めるNPOあなたのいばしょでは、24時間365日、年齢や性別を問わず、誰でも無料・匿名で利用できるチャット相談窓口を運営している。誰かに頼りたくても頼れない、話したくても話せないという「望まない孤独」によって苦しんでいる人が、「信頼できる人」にいつでも確実・簡単にアクセスできる窓口だ。

 私自身、ひとり親家庭で育ち、家庭内トラブル、不登校など様々な経験をしてきた。頼れる人がおらず、常に「孤独」で、自らの人生に希望を失い、どうやって死ねるかを常に考えていた時期もあった。

 しかし、私にとって人生で初めての信頼できる人となる、高校で3年間担任だった先生と「奇跡的」に出会えたことで、私の人生は大きく好転した。何か問題が起きても頼れるという安心感を得ることができたのだ。その安心感は、家庭の問題などを乗り越える力をくれ、大学進学を大きく後押ししてくれた。私が現在、大学生でいられるのは、その先生の存在によるところが大きい。

 しかし現在、過去の私のように、頼れる人がいないことによって様々な問題を抱えて苦しんでいる人が、私にとっての先生のような、「信頼できる人」に出会えるとは限らない。そうした人に巡り合えるかは「運」であり、「奇跡」なのだ。

 私はそれを「奇跡」ではなく、問題を抱えて苦しんでいる時に誰もが「確実」に信頼できる人にアクセスできるような社会にしていきたいと思っている。過去に悲観的になるのではなく、自分の過去と同じ状況にいる人たちに手を差し伸べていくことが「信頼できる人」を得た私の使命だと考えるからだ。

 そうした想いで設立したのが、この相談窓口である。

若者を「犯人」扱いする風潮

 新型コロナウイルスの影響で、私の過去と似たような境遇にいる学生や若者が苦境に立たされている。実際に寄せられた相談をもとに、今社会で学生や若者に何が起きているかお伝えする。

 全国的に外出自粛が要請されている中で、繁華街などに学生や若者が集まっており、感染拡大の要因になっているのではないかとの意見がある。

 週刊誌「FRIDAY」の3月27日・4月3日号には、「ヒマな中高生がいっぱい! 渋谷・原宿で『クラスター感染者』量産」という記事が掲載された。記事内には「新型コロナウイルスの感染拡大で学校が休校となり、ヒマを持て余した中高生が繁華街に押し寄せている。学校からは不要不急の外出を控えるように言われているものの、言いつけを守る中高生はあまりいない」と書かれている。

 また、政府インターネットテレビが4月9日に公開した「3つの密を避けよう!」という広報動画には、若者が外出をしているシーンのみが描かれ、まるで外出をしている若者が「感染を拡大させている犯人」のような印象を受ける。

 このような、外出している学生や若者を「けしからん」とするような社会的風潮に対し、「外出せざるを得ない学生や若者」の存在に目を向けて欲しい。

 学生や若者に限らず、娯楽目的で外出したり、「家にいるのに飽きた」などの理由で繁華街に繰り出したりする者がいることは事実だろう。そのような不要不急の外出は控えるべきである。

 しかし、外出をしている学生や若者の中には、虐待や暴力、親子不和、家庭内トラブルなどによって、家にいることが安全でなかったり、家にいることが困難な状況にあったりして、外出せざるを得ない者もいる。学生や若者がヒマを持て余し、新型コロナウイルスの危険性を理解せずに外出しているとは限らないのだ。

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筆者

大空幸星

大空幸星(おおぞら こうき) NPOあなたのいばしょ代表・慶應義塾大学総合政策学部生

1998年、愛媛県松山市生まれ。「信頼できる人に気軽・簡単・確実にアクセスできる社会の実現」と「望まない孤独の根絶」を目的にNPOあなたのいばしょを設立。孤独対策、若者の社会参画をテーマに活動している。

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