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新型コロナ「収束」の中国の「終息」にはほど遠い地雷だらけの実情

健康診断なみのPCR検査でも捕捉できない無症状感染者が終息を妨げる

浦上早苗 経済ジャーナリスト、法政大学MBA実務家講師、英語・中国語翻訳者

拡大中国・湖南省長沙市で再開された中学校の寮に入る前に体温測定をする生徒=2020年4月13日、新華社

 「コロナが落ち着いたら会いましょう」「コロナが終わったら旅行に行こう」

 家族や友人と、こう話している人たちは多いだろう。新型コロナウイルスの拡大で行動変容が起きた後の社会に焦点を当てた「アフター・コロナ」論議も活発化している。

 では「コロナが落ち着く」、あるいは「コロナが終わる」は、どういう状態なのだろうか。

 今のところ、日本でその基準は明確になっていないし、「落ち着く」と「終わる」はかなり違う。コロナが落ち着き、収束したと言ってよい中国の状況を見ると、むしろ「終息」の遠さを実感する。今の「落ち着いている」状態は、地雷の上を歩いているようなものかもしれない。

封鎖は解除されたが地雷が残る武漢市

拡大2カ月半にわたる都市封鎖が解除された直後の武漢市内。シャッターを閉じたままの店も多く、銀行の入り口では防護服姿の人が体温検査などをしていた=2020年4月9日、武漢市、平井良和撮影

 4月8日、湖北省武漢市の封鎖が1月23日以来2カ月半ぶりに解除された。中国のコロナとの戦いにおいて、最大の“戦果”と言っていいだろう。

 4月22日には、湖北省内で治療中の患者が100人を初めて割り、97人に減ったと発表された。ピーク時には7つの専門病院と、ホールや体育館を転用した16カ所のコンテナ病院で数万人を収容していたのが、コンテナ病院は3月中旬に全て閉鎖され、10日余りで建設された「雷神山医院」も4月中旬、最後の患者が退院した。

 では、武漢は本当に安全になったのか。緊急事態宣言下の日本に比べると感染リスクはかなり小さい。それでもあちこちに地雷が残っている。

 武漢市を出られるといっても、感染リスクが極めて小さいと確認された人のみで、それでも武漢を離れた後に感染が確認された人もいる。北京市は武漢から戻ってくる人の人数を制限し、全員にPCR検査を受けさせている。出入りが自由になったといえども、当局は市民に「不要不急の理由がない人は出ないで」と要請している。

 武漢に埋まる地雷とは、「無症状感染者」だ。中国は従来、他者に感染させる可能性が低いとして、無症状感染者を感染者数に数えておらず、海外から批判されていた。だが、最近の臨床研究で無症状感染者も感染力を持つことが明らかになっている。


筆者

浦上早苗

浦上早苗(うらがみ・さなえ) 経済ジャーナリスト、法政大学MBA実務家講師、英語・中国語翻訳者

早稲田大学政治経済学部卒。西日本新聞社を経て、中国・大連に国費博士留学(経営学)および少数民族向けの大学で講師の職に就き6年滞在。新聞社退職した時点でメディアとは縁が切れたつもりで、2016年の帰国後は東京五輪ボランティア目指し、通訳案内士と日本語教師の資格取得をしましたが、色々あって再びメディアの世界にてゆらゆらと漂っています。市原悦子演じる家政婦のように、他人以上身内未満の位置から事象を眺めるのが趣味。未婚の母歴13年、42歳にして子連れ初婚。最新刊「新型コロナ VS 中国14億人」(小学館新書)

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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