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オリンピック以上に困難なパラリンピック延期に独自の課題 コロナ対策の準備は

増島みどり スポーツライター

拡大東京パラリンピック延期決定後も、変わらず黙々と練習に励むパラ陸上の井谷俊介

サポート環境の変化へ懸念も募る

 JPC(日本パラリンピック委員会)河合純一委員長(44、パラリンピック競泳全盲クラスで5つの金メダルを獲得)は、延期された東京パラリンピックの開会式、2021年8月24日まで500日となった4月11日、外出の自粛、トレーニング場の閉鎖などで苦境に立つパラアスリートたちにメッセージを送った。委員長が会見などではなく選手に直接発信する機会はこれまで多くなかった。しかし1月、JPC初のアスリート出身委員長に就任した河合氏は大会の団長でもあり、各方面で積極的に活動する。

 「厳しい状況が続くなかだが、工夫して自宅でできるトレーニングもある。今だからこそ、パラリンピックの価値を選手それぞれが改めて認識し、それを皆さんに届けよう」

 私用で欠席せざるを得なかったJOC(日本オリンピック委員会)山下泰裕会長(62)より早く、橋本聖子五輪担当大臣(55)とも面談。パラリンピック延期による問題点は、オリンピックと異なっており、これらを早くから大臣に投げかけ、解決のための支援を頼んだ。

 延期決定後、費用の議論や代表選考といったオリンピックの課題に比重がかかるが、パラリンピックで必要とされる独自の課題についてはなかなか取り上げられていない。

 JPCでは今後、なるべく早い段階で選手側の声を集めるアンケートなどを実施し、実態の把握を早急に行う。

 シドニー大会で、日本人初の義足の走り高跳び代表となり、東京で6大会連続出場の偉業を果たす鈴木徹(39=SMBC日興証券)は、JPCのアスリート委員会幹事を務め、延期決定後、同委員会でオンライン会議を行い、それぞれの競技、各委員の意見を集約した。例えば車いす競技の選手が車いすを常に触っていると周囲から不快に思われた、視覚障害の選手は安全の確保に物を触らなくてはならないが、それも難しくなった、など、ウイルスの感染拡大による延期で練習環境にも変化が出ているといった報告を聞いた。

 また、経済状況の変化で雇用にも影響が出るのではないかと危惧する。

 「パラアスリートたちの雇用形態はそれぞれです。選手だけではなく、サポートをしてくれる方々も多くいらっしゃいます。今後の経済状況も影響するでしょうし、来年まで今夏と同じように競技を続けられるか。選手たちからウイルス感染拡大において困難な状況、雇用での問題を発信していく方法もあるのではないか、と議論しています」と、現場の切実な思いを代弁する。

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筆者

増島みどり

増島みどり(ますじま・みどり) スポーツライター

1961年生まれ。学習院大卒。84年、日刊スポーツ新聞に入社、アマチュアスポーツ、プロ野球・巨人、サッカーなどを担当し、97年からフリー。88年のソウルを皮切りに夏季、冬季の五輪やサッカーW杯、各競技の世界選手権を現地で取材。98年W杯フランス大会に出場した代表選手のインタビューをまとめた『6月の軌跡』(ミズノスポーツライター賞)、中田英寿のドキュメント『In his Times』、近著の『ゆだねて束ねる――ザッケローニの仕事』など著書多数。

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