コロナ時代を生き抜く、アーティスト的生き方
二つ目の変化として「新しい応援スタイルの出現」がある。自治体による文化支援や企業によるメセナ活動はもちろんアートシーンを支える重要な支援策であるが、そうした間接的かつ公共的な支援策というより、新しい発想による直接的な応援策が期待される。
アメリカやヨーロッパでは、クリエイターが有料ファンクラブを簡単につくれる「パトレオン」の利用が伸びている。ここでは作家を応援したい人が「パトロン」となって毎月、一定金額を支援するかわりに、作家はパトロンだけが見られる作品、動画、ポッドキャストなどを提供する。たとえるとクリエイターによるオンラインサロンのようなものだ。
このアメリカのスタートアップには、180以上の国で数十万人ものアーティストが登録。公式サイトによると3月以降、パトロン(金銭支援者)が急増しているという。
発表場がなくなり困っている作家が多い一方で、「アーティストを応援したい」という応援欲も伸びているのではないか。パトレオンはその受け皿になっているといえよう。
アーティストと鑑賞者をダイレクトに結びつけるサービスとして、日本では「ArtSticker」(アートスティッカー)がある。アーティストに気軽な値段で支援を送りながら、作品の感想が残せるアプリだ。
今までは作家を応援したいと思っても、作品を購入するまではふみきれない、という人がいた。
ArtStickerなら、お気に入りの作品に対して数百円からサポートができる。そしてサポートした人だけが、作家に感想を直接伝えることができる。
ArtSticker では4月13日から国内外の写真家による「STAY HOME展~写真家が自室で見ているものたち~」が始まった。在宅下にあっても作家は作品発表ができ、私たちは鑑賞、そして応援することができる。
現在、「アート体験のリモート化」によって、私たちは作品を手軽に見ることができるようになった。一方で、作家たちの収益につながる仕組みも必要だ。パトレオンやArtStickerのようなプラットフォームは、作家と観客をダイレクトにつなぐという新しい応援スタイルを提示してくれる。
アーティストへの応援法は、今後どうなるのか? ヒントを与えてくれるのは、作家の「クリストとジャンヌ=クロード」だ。彼らはドイツの国会議事堂を布で包んだり、パリの橋「ポン・ヌフ」を布で覆うなど、大規模なアートプロジェクトを「自費で」行なってきた。何億円もの資金をどう集めたのか? 彼らはプロジェクトの完成予想図を描いて売ったり、議員や地権者などの関係者と何度もディスカッションを重ねて理解者を増やすことで、作品をつくりあげていった。
今後のアーティストと応援者の関係も「クリスト型」になるのではないか。アーティスト自身がメディアになり、実現したいプロジェクト・作品について語り、共感者を集めていく。今後、作家と観客との距離は、さらに近づいていくだろう。
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