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アートシーンに起きている三つの兆候

コロナ時代を生き抜く、アーティスト的生き方

電通「美術回路」 若林宏保・東成樹

アート市場のデジタル・トランスフォーメーション

 三つ目は「アート市場のデジタル・トランスフォーメーション」である。現在、オフラインのセールの大部分は開催が中止もしくは延期されているが、いくつかの比較的低価格帯のセールについてはオンラインで開催されている。結果を見ると、落札率も高く、オンラインセールに対するニーズの高さが感じられる。競売人の掛け声が飛び交う密室空間における高揚感がハンマープライスを競り上げる大きな要因であるため、リアルの高揚感をオンラインにどう取り込んでいくかが大きな課題であるが、今後はどんどんオークションのオンライン化が進むだろう。

 それと同時に、世界のオークションにおける落札価格のオープン化と、ブロックチェーン技術を活用した信用制度の構築などが進むことで、新しいアートコレクター層を創造し、アート市場は新しい発展を目指していくだろう。

コロナ時代を生き抜く、アーティスト的生き方

アートへの接点の多様化と新しいアート層の出現

 このようなアートプラットフォームの変化は、様々な人々のアートへの接点を多様化し、アートに対する新しい関わり方が生まれるだろう。

 「アート体験のリモート化」によって、これまで時間的あるいは地理的といった物理的な理由で美術館やギャラリーに行けなかった人たちが、自分の興味と都合に合わせて、容易にアートに触れられるようになる。

 また、アーティストへの支援は、これまで自治体や大企業が行うものであり、自分とは関係ないと思っていた人たちが、自らが共鳴し応援したいと思うアーティストに対して、個人ベースあるいはプロジェクトベースで経済的あるいは技術的な資産を提供することでアーティストの創作活動を応援することが可能となる。

 さらにアート市場のデジタル・トランスフォーメーションが進むことで、お気に入りのアート作品を、ギャラリーやオークションあるいはアートフェアといった様々なチャネルから購入し、審美眼を養いながら、自分だけの小宇宙ともいえるマイコレクションを築くことができる。

 こうしたアートへの接点の多様化は、これまでとは違った新しいアート層の出現を予言させる。

コロナが浮き彫りにする社会の歪み

 では、そうしたアートへのアクセスの多様化は、私たちに一体何をもたらしてくれるのだろうか? 私たちはまさに「withコロナ」と言われるように、コロナとはしばらくの間、向かい合って生きていなければならない。コロナは私たちの生命を脅かすと同時に、経済、文化、働き方、政治的対立、人権、社会システム、グローバル資本主義など、これまで私たちがこれまで属していた世界の様々な歪みを露呈させている。

 仮に私たちがコロナ危機から解放されたとしても、決してコロナ以前の世界に戻ることはないだろう。そこには、全く違う価値観を持った「コロナ後の世界」があると思われる。そうした世界を、「ニュー・ノーマル」という呼び方が生まれているが、私たちにとっての「新しい普通」あるいは「新しい日常」とは、どんな日常だろうか? 私たちはこれまでに見たことのないヴィジョンを描いていく必要に迫られている。

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