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葬式はどこに行く――死が“高齢化”して遠ざかる社会で

武田徹 評論家

 日本社会は“半減期”が長い社会になった。

 半減期とは放射性物質の量が半分になるまでの期間だ。東日本大震災の時に、誰もが痛みを伴いつつ覚えた語彙のひとつだろう。福島第一原発の事故でセシウム137という放射性物質が大量に放出された時、専門家はその半減期が約30.1年だと述べていた。それは30.1年のうちに約半分のセシウム137がβ線(電子線)を放射して放射線を出さないバリウム137に変わるという意味だった。

 その時、約30年で半分になるのならまだマシだったと思った人もいたかもしれない。なにしろ原爆の材料になるプルトニウム239だと半減期が2万4000年にもなるという。それに比べれば、と考えてしまうからだ。

 だが、原子単体で考えると、どっちがよかったかわからなくなる。プルトニウム原子は2万4000年の間にα線という放射線を出す確率が50%、つまり放射線を出すか出さないかが半々なのだと気づいてみると、こっちの方が放射線を浴びる確率は少ないと思うこともあるだろう。実際には微量のプルトニウムであっても原子の数は大量で、その中には2万年どころかすぐに放射線を出してしまうものも確率的に存在しえるし、放出されるのはα線といって、遮蔽は容易だが直接体内に入るとセシウムの出すβ線(電子線)より深刻な影響を発生させる放射線なので、プルトニウムは厳重に管理する必要がある。

 この半減期の知識を踏まえて、悪趣味なのは覚悟のうえで人間の人生を考えてみる。

「エンディング産業展」で=2019年8月、東京ビッグサイト 撮影・大野洋介拡大「エンディング産業展」で=2019年8月、東京ビッグサイト(以下の写真も同様) 撮影・大野洋介

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筆者

武田徹

武田徹(たけだ・とおる) 評論家

評論家。1958年生まれ。国際基督教大大学院比較文化専攻博士課程修了。ジャーナリストとして活動し、東大先端科学技術研究センター特任教授、恵泉女学園大人文学部教授を経て、17年4月から専修大文学部ジャーナリズム学科教授。専門はメディア社会論、共同体論、産業社会論。著書に『偽満州国論』、『流行人類学クロニクル』(サントリー学芸賞)、『「核」論――鉄腕アトムと原発事故のあいだ』『戦争報道』、『NHK問題』など。

 

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