学生と大学経営の危機を乗り切るために
2020年05月01日
大学の授業料など学費の返還を訴える声が、日に日に高まっている。新型コロナウイルス感染症の拡大により、困窮する学生が増えているからだ。
学生団体「高等教育無償化プロジェクトFREE」の調査によると、回答者の「5人に1人」が退学を検討しているという(注1) 。インターネットを通じて各大学や、政府に学費の返還を求める学生の運動も広まっている。
大学に身を置く「当事者」として、こうした声をあげる学生に敬意を表するとともに、心から連帯したいと考えている。今、なぜ大学の学費返還が必要なのか。また、なぜ政府が学生の援助に本腰を入れるべきなのか。本稿では、大学経営をとりまく数年来の状況に目を向け、提言を行いたい。
学費返還を訴える学生の運動の高まりを受けて、一部の大学では学生に学費の一部を「返還」する動きが広まっている。
たとえば、早稲田大や獨協大では、10万円の給付金が学生に配られることになった。早大の場合は「学費を負担する保護者等の家計急変や学生本人のアルバイト収入激減により経済的に困窮している学生が増えている」ことによる措置であり、この給付とは別に「オンライン授業の受講に必要な機器(PC、WiFi機器等)の貸し出しの措置」を行うという。
筆者が所属している慶應義塾大学においても、学生への「補助」が始まった。しかし、不十分な部分も多いと言わざるを得ない。まず金額が1万5千円であるという点である。この金額で、オンライン授業受講に必要な機器を購入することが可能になるだろうか。甚だ疑問である。
さらに、この「補助」は一律給付ではなく、オンライン設備の利用費や購入費に充当させることを誓約したうえで、応募をしないと審査対象にすらならないことも問題である。申請画面を開くと「真に支障が生じている」学生に限っての制度であることを「理解しました」という選択肢をチェックしないと申請できない仕組みになっている。さらに、通信環境の整備のために支出した「証拠書類」の提出を求められる。そのうえで審査を受けないと受給にたどり着けないのである。あたかも生活保護の「水際作戦」を想起させる。
筆者の周囲の学生からも、「手続きが煩雑である」との声が上がっている。それだけではない。「真に支障が生じている」との文言から、申請に対し及び腰になっている友人もいる。飲食店に酒類を卸すアルバイトをしていたある学生は、アルバイトが完全になくなってしまった。実家暮らしであるため、オンライン設備には困っていないが、経済的には困窮している。しかし今回、申請を見送ることにしたという。「ちょっと倫理的な引け目を感じている。それで悩んでいる」
ちなみに、この4月から慶應義塾の付属校ならびに大学では、学費が「値上げ」されている。筆者が所属する法学部の場合、昨年度87万円だった授業料は、今年度から88万円になるという。「足し引き」すると、仮に今回の「補助」の審査が通過しても、結局5千円しか返還されない計算になってしまう。
比較的財政基盤が安定しているとされる慶應大においても、この状況である。とするならば、他大学ではさらに状況が深刻であるかもしれない。ただでさえ
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