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新型コロナウイルスとともにさらに広がるニセ科学

手を変え品を変えたアプローチ 「免疫力」には要警戒

左巻健男 東京大学講師・元法政大学教授

 新型コロナウイルス感染症(以下新型コロナと略す)への不安感が高まっている最中、ニセ科学は手を変え品を変えて消費者にアプローチする。

 前回の記事(「新型コロナウイルスとともに広がるニセ科学」)では、次の内容を扱った。

・「コロナウイルスには26~27℃のお湯が効果がある」というデマ
・代替医療ホメオパシーのレメディ登場
・根拠のない「新型コロナウイルスの感染予防にアオサが効果的」
・「首から下げるバカ発見機」と揶揄されていた空間除菌できるというグッズ
・3.11で福島に広く入り込んだEM菌はどうだろうか?

 本記事は、この第二弾である。

「こんな言葉があったら要注意!」の代表〝免疫力〟

Shutterstock.com

 健康、医学に関するニセ科学にはよく使われる言葉がある。

 ニセ医学に警鐘を鳴らしている小内亨医師は、論説「こんな言葉があったら要注意! ニセ医学がよく使う言葉、フレーズ 」(『RikaTan(理科の探検)』誌2018年4月号 通巻31号)で、次のような言葉をあげている。 

「新陳代謝」「免疫力」「脂肪燃焼」「セルライト」「抗酸化作用」「血液サラサラ・ドロドロ」「好転反応」「酵素」「デトックス」「アンチエイジング」

 新型コロナの不安に乗じてよく使われるのは「免疫力」だ。

 病原体から人体を守る免疫系。しかし、免疫系が過剰に働けば、症状を悪化させたり死亡させたりもする。新型コロナでも、サイトカイン・ストームという免疫の暴走が起こり、異常な量の炎症性サイトカインが作られてしまい、重症の病態になることがある。免疫系はとても複雑なので、免疫は、強すぎず弱すぎないのが重要だ。

 しかし、「免疫力を高める」というと、健康によさそうというアピールができるので、ニセ科学は曖昧なままによく使うのだ。小内さんは、先の論説で次のように述べる。

免疫力:免疫力が強いか弱いか? この言葉を医学的に証明することはきわめて難しいといえます。なぜなら、免疫は一般に考えられているよりはるかに複雑であるからです。抗体を作り出す液性免疫、免疫細胞が直接攻撃する細胞性免疫という区別があるものの、免疫をコントロールするネットワークは複雑であり、それは巧みに制御されています。免疫が働かなくなれば、生体の防御が不十分になる一方、それが過剰に働けば、花粉症などのアレルギー疾患や膠原病などの自己免疫疾患を引き起こすことになります。つまり、免疫力を上げればよいという単純な問題ではないのです。「免疫力が高まる」といった表現には要注意です。

「ビタミンDや緑茶が新型コロナに効く」という宣伝

 たくさんの人が飛びついたのが「新型コロナに効く」という特定の食品や栄養成分だ。キーワードはやはり「免疫」。私たちの体を守っている免疫系の働きで、一度倒したウイルスがたとえ再び攻撃をしかけてきても病気になりにくい。

 しかし、

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