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「9月入学」より「受験・入学・就活時期の弾力化」を!

今年度の高大受験生・就活生のコロナ緊急対応を優先して考える

末冨 芳 日本大学教授

(2) 高校入試こそ知事・教育長のリーダーシップの見せ所

 高校入試も、地域ごとに柔軟な対応が必要となるでしょう。

 とくに高校入試は都道府県単位で行われることが主流ですので、高校入試における国公私立高校の足並みそろった対応については、高校を所管する都道府県知事と都道府県教育長のリーダーシップとコンビネーションの見せ所だと思います。

 また万が一今年度の9月始業に踏み切られる場合、高校3年生の卒業が遅れることになりますが、いまこの瞬間にも志望校を目指して勉学に励んでいる高校3年生が、通常通り3月卒業を希望した場合の柔軟な高校卒業資格認定のルールなどを整備することも重要になってくるはずです。

 すでに文部科学省4月10日付通知では、学校の「指導計画等を踏まえながら家庭学習を課し、教師がその学習状況や成果を確認し、学校における学習評価に反映することができる」という休校の長期化・断続化にそなえた柔軟な方針が示されています。

 高校の単位認定権は校長にあり、高校3年生の生徒の個別の状況をふまえ、学校での授業にもとづく単位認定以外も行える仕組みがすでにありますので、都道府県におけるコロナ災害対応のルール整備も含め、やはり地方分権における都道府県ごとの判断が問われる場面です。(文部科学省「学校外における学修の単位認定」参照)

 9月入学・始業にせよ、入学時期をずらす選択をなさるにせよ、各都道府県がとくに子ども・若者や保護者の不安や意見を受け止めてくださることを期待しています。

 知事さん・教育長さんの手腕に注目しています。

拡大metamorworks/Shutterstock.com

 私自身は拙速な9月入学は、新小1・中1・高1の入学人口を膨張させ、かつ新小1が「先進国でもっとも遅く義務教育を開始する子どもたち」になってしまう「コロナ入学世代」の犠牲者を生んでしまう懸念をもっていることを、あらためて付記しておきます。(『火事場の9月入学論は危険だ/先進国で最も遅く義務教育を始める「コロナ入学世代」への懸念』参照)

(3) 就活はすでに経団連と大学とは通年採用ルールで合意、ただしコロナ氷河期のための制度整備は重要

 もともと就活は2021年度卒業生(いまの大学3年生)から、通年採用ルールで合意されていました。

 学生の就職活動をサポートする大学教員の私から見ても、経団連加盟企業以外の企業は就活を前倒しし、すでに実質的に通年化しているというのが実態です。

 またコロナ感染拡大の長期化に対応し、萩生田文科大臣と中西経団連会長が、高校生・大学生・大学院生の採用の通年化を加速すること、とされています。(「コロナ禍で就活柔軟化 経団連と政府、通年採用拡大」参照)

 問題は、コロナ災害で被害の大きい業界(運輸・旅客・観光産業等)での採用控えが深刻化しつつあり、コロナ氷河期世代が生まれてしまうのではないか、という懸念が大きいことです。

 就職活動の通年化とともに、景気回復が起きれば企業が採用を増やしやすくなるよう、政府は新卒採用や職を失った若者の採用に助成措置を講じ、あるいは大学の留年(卒業延長)を無料もしくは低額の在籍料で行えるようにするなど、可能な限りの支援策が必要です。

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筆者

末冨 芳

末冨 芳(すえとみ かおり) 日本大学教授

山口県出身、京都大学教育学部・同大学院教育学研究科修了。専門は教育行政学、教育財政学。子どもの貧困対策は「すべての子ども・若者のウェルビーイング(幸せ)」がゴール、という理論的立場のもと、2014年より内閣府・子どもの貧困対策に有識者として参画。教育費問題を研究。家計教育費負担に依存しつづけ成熟期を通り過ぎた日本の教育政策を、格差・貧困の改善という視点から分析し共に改善するというアクティビスト型の研究活動も展開。多様な教育機会や教育のイノベーション、学校内居場所カフェも研究対象とする。主著に『教育費の政治経済学』(勁草書房)、『子どもの貧困対策と教育支援』(明石書店,編著)など。

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