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9月入学論争 最大のリスクは「社会の分断」だ

コロナ禍の今から目指すべきは、それぞれのニーズに応じた学習の個別化である

米澤彰純 東北大学教授

分断の危険性

 9月進学の話は、格差解消とも結びつけて論じられている。これが実際に格差の解消に役立つのか、あるいはかえって拡大につながるのかの論証が積み重ねられることは社会として健全である。

 他方で、50歳代の私の個人的経験と現在の状況とのズレの話を持ち出したのは、私自身は、この問題の本質が、個人の経験の違いによる社会の分断の危険性にあると感じているからである。

 たとえば、私は現在、ほぼ2ヶ月にわたって一度も仙台を離れずにこの文章を書いている。それ以前は、東京都心に最低月に2回、海外に年間10回以上出かけていた。感染症のリスクもある途上国に行くこともあるし、緊急事態宣言直前の東京都心へも出向いているので、市中感染に関わる肌感覚はある程度はある。それでも、県内で感染者が出ない日が続く地方都市の自宅というゆとりのある空間で執筆作業をしながら、密集空間や医療崩壊の恐れがごく身近にある大都会の学童保育や医療現場に思いをはせるには、広く情報収集を行い、想像力を働かせる強い意志が必要となる。

拡大MIA Studio/Shutterstock.com

 この分断は、児童・生徒の間でさらに深刻である。

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筆者

米澤彰純

米澤彰純(よねざわ・あきよし) 東北大学教授

東京大学大学院教育学研究科博士課程中退、2009年東北大学より博士(教育学)。東京大学助手、経済協力開発機構コンサルタント、広島大学、大学評価・学位授与機構、名古屋大学准教授を経て現職。専門は 教育社会学・高等教育。高等教育政策・質保証などのマクロな国際比較を得意とし、現在は、途上国までを含めた大学の国際的な役割について研究。東北大学では、国際戦略形成のための調査や立案に従事。主著にJapanese Education in a Global Age、Emerging International Dimensions in East Asian Higher Education (いずれもSpringer 編著)、編書『大学のマネジメント』(玉川大学出版部)、訳書『新興国家の世界水準大学戦略』(東信堂)など。