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オンライン国会を実現せよ

議院自律権から考えて、オンライン審議は合憲的に実施可能だ

前田哲兵 弁護士

 政府と都道府県知事による外出自粛・テレワーク要請を受け、国民全体がウイルスの感染拡大を防止すべく努力を重ねている。私は弁護士業を営んでいるが、緊急事態宣言を受けて裁判期日は延期となり、所属する各種団体の会議も軒並み中止となっている。自宅においてオンライン会議や書面作成に勤しむ日々だ。

テレビで見かける違和感

 そうした中、テレビを見ていて、違和感を覚える場面がある。国会議員が国会で一堂に会して、白熱した議論を交わしているのだ。議論を交わしている本会議場や委員会室は、お世辞にも風通しが良さそうには見えない。その空間の「3密度合い」は相当高そうに思える。もしかすると、今問題となっているパチンコ店にも匹敵するのではないか。

 考えたくはないが、もし「国会審議中にクラスターが発生しました」などということになったら、この国の舵取りは誰が行うつもりなのか。もちろん、それが起こらない可能性もある。しかし、それが起こってしまう可能性もある。そうした両方の可能性があるとき、危機管理のあり方としては、最悪の事態に備えた行動が求められるのではないだろうか。

国会のコロナ対策の現状

拡大新型コロナウイルスの感染防止のため、議員同士の間隔を空けて開かれた参院本会議=2020年4月10日

 国会のコロナ対策の現状は、論座の「コロナ危機で政治家の働き方も変わる。選挙もまた……」(岸本周平)が詳しく紹介している。

 それによると、衆院本会議の討論は、半数の議員だけが出席するようにしているという。残りの半数はというと、自分の部屋でテレビ中継を観て、採決の時間になると議場に向かっているようだ。これは委員会でも基本的に同じだという。議場にいる人数を減らして、少しでも感染リスクを下げようということだろう。

 しかし、議場にいる議員を半数にしたとしても、根本的な問題解決にはなっておらず、感染リスクは依然として残っている。国民に対して「密集」を避けるように要請している政治家が、他方において、国会で「密集」して議論を交わしているというのは、なんとも矛盾している。

 国会における議論が「不要不急だ」などとは毛頭思っていない。しかし、国会議員が倒れれば、この国の政治は機能停止に陥り、国民が不利益を被る。国会議員に期待しているからこそ、心配になる。

国会でオンライン審議が進まない理由

 実は、国会でオンライン審議が進まない理由は、憲法の文言にある。憲法56条1項を見てみよう。

【憲法56条1項】
両議院は、各々その総議員の三分の一以上の出席がなければ、議事を開き議決することができない。

 このように、憲法上、衆議院と参議院は、それぞれ本会議を開催するには、「総議員の3分の1以上の出席」が必要とされているのだ。このように、会議を開催するために必要となる出席者数のことを「定足数」という。定足数を満たしていない議院の決議は、憲法56条1項に違反するため、理論的には無効ということになる。

 問題は、憲法56条1項における「出席」という文言の意味だ。大別して、

(1)実際に議場に居ることが絶対に必要だとする考え方、と
(2)オンラインでの会議への参加でもよいとする考え方、があるだろう。

 上述のとおり、現在の国会は、半数の議員が実際に議場に居るようにしているようであるが、それは(1)の考え方を取っているためだろう。つまり、「実際に議場に人がいないと、憲法56条1項の定足数要件を満たすことができない」という考え方だ。

 しかし、この解釈を貫くと、例えば、国会議員の間で新型コロナウイルスの感染が広がり、3分の2を超える議員が議場に行けなくなった場合には、国会を開催することすら不可能となる。その結果、この国の政治は完全なる機能停止に陥ることになる。

 果たしてそれで良いのだろうか。

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筆者

前田哲兵

前田哲兵(まえだ・てっぺい) 弁護士

1982年、兵庫県生まれ。坂井・鵜之沢・前田法律事務所所属。相続や交通事故といった一般民事や刑事事件、企業法務の他、政治資金監査や選挙違反事件などの政治案件や医療事故も扱う。医療政策実践コミュニティー(H-PAC)医療基本法制定チームの筆頭、日本プロ野球選手会公認選手代理人、小中学校のスクールローヤーとしても活動中。著書に『業種別ビジネス契約書作成マニュアル』『交通事故事件21のメソッド』等

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