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大学病院は「最後の砦」である~東京医科歯科大 コロナ・パンデミックとの闘い

重要なのは看護師の数、清掃を担った外科医たち、これが続けば年間100億円の減収…

大川 淳 東京医科歯科大学 理事・副学長(医療・情報担当) 整形外科学教授

<なぜ新型コロナ感染症対策で大学病院が後れを取ったのか>

 多くの大学病院は高度な手術、診療を担っており、本院も我が国有数の救命救急センターがあって、都内の三次救急の要の一つです。

 一方、感染症に関しては5年ほど前に、緩和ケアのための病床に転換するため結核病床の指定を返上していました。実際、全国で80余りある大学病院本院のうち感染症の専門病床を有する第二種感染症指定医療機関はわずか16のみです。

 東京でも感染症指定を受けている大学病院は13大学中3か所です。

 感染症患者は国立病院機構や都立病院などの公立病院に集められるような仕組みになっていました。つまり、東京都内では大学病院は高度先進医療、公立病院は感染症医療という住み分けがあったことになります。

 そのため、東京都が3月に都内の大学病院の病院長を都庁に集めて、新型コロナウイルス感染症患者の入院要請を始めた際には、ほとんどの大学病院は後ろ向きでした。

拡大情報を集約し共有することでチームワークづくりの要となっている新型コロナウイルス対策室

 新型コロナウイルス感染症は、インフルエンザと比較すると伝播力は同等のようですが、致死率の高さの点が特徴のように感じられます。

 従来からインフルエンザの流行期には院内感染が広がり入院治療に影響がでることがありましたが、新型コロナウイルス感染症では高齢者やがん患者、手術後の患者など免疫力が低下している場合には短期間に生命に危険が及ぶことがあります。そのため、院内感染は絶対に防止する必要があり、同じ病棟でのコロナ患者と非コロナ患者の混在は回避しなければなりません。

 その点で、重症のがん患者や難病患者を多く抱える大学病院が、新型コロナウイルス感染症患者を引き受けに後ろ向きだったのは当然です。大学病院に本来期待される医療が提供できなくなるからです。

 しかしながら、都内では3月末頃から人工呼吸器を要する重症患者が急増しました。死亡例の報道が続き、大学病院でなければ診ることのできない患者も多く発生していると判断して、本院も4月になってコロナ患者受け入れに舵を切りました。


筆者

大川 淳

大川 淳(おおかわ あつし) 東京医科歯科大学 理事・副学長(医療・情報担当) 整形外科学教授

1982年、東京医科歯科大学医学部卒業。九段坂病院整形外科医員、東京医科歯科大学整形外科助手、諏訪中央病院整形外科主任医長、東京医科歯科大学医学部附属病院総合診療部助教授などを経て、2011年に東京医科歯科大学大学院整形外科学教授、2016年に東京医科歯科大学医学部附属病院 病院長。2020年に東京医科歯科大学理事・副学長。

※プロフィールは、論座に執筆した当時のものです