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緊急事態宣言解除後に、アスリートにも求められる変化

増島みどり スポーツライター

東京五輪出場が内定している瀬戸大也

強化拠点の使用再開へ訴え

 緊急事態宣言が発令された4月7日以降、活動休止を続けている五輪選手たちと、萩生田光一文科相(56)、スポーツ庁・鈴木大地長官(53)との意見交換会5月13日、がオンラインで行われた。

 3月24日に東京五輪の1年延期が決まった当初は、「現状を前向きに捉える」と、多くのアスリートたちがポジティブなメッセージを発信。様々な工夫を凝らした自宅でのトレーニング風景は、新型コロナとの闘いの、ひとつのシンボルとしても注目を浴びるものとなった。

 しかし緊急事態宣言以降、日本のオリンピック強化の拠点、総本山とも「虎の穴」とも呼ばれるナショナルトレーニングセンター(通称NTC、東京・北区)、隣接する国立スポーツ科学センター(通称JISS)が全面的に閉館。頼みの綱だった各スポーツ施設、民間のクラブ、最後まで練習場所として何とか使用できた近所の公園も閉鎖された。会見には出席していなかったが、NTCには昨年、主にパラアスリートのための施設「イースト」棟も新設されており、パラのトップ選手たちも同様の苦境に置かれている。

 緊急事態の長期化はコンディション面での焦りだけではなく、活動できないためにスポンサーからの支援といった様々な面で影響が出始めている。競泳の金メダル候補と言われる瀬戸大也(25=ANA)、男子卓球の水谷隼(30=木下グループ)、女子バレーの荒木絵里香(35=トヨタ車体)の3選手は五輪出場が内定しており、出場を狙う男子フェンシング(エペ)の見延和晴(32=ネクサス)を含め4人が意見交換会に参加。4人とも「NTCでのトレーニングを早く再開できないか」と直訴し、感染防止のために使用制限など新しい利用形態を受け入れる考えを明かした。

3密、大クラスターへの懸念解決が絶対条件

 2008年オープンのNTC、01年開設のJISSとも日本スポーツ振興センター(文科省所轄)の管轄下にあり、練習施設と併設される宿泊棟には最大で448人まで滞在できる。低酸素室や国際大会仕様の用具、テニスコートならサーフェス(コートの仕様)が揃えられ、トップ選手のハイパフォーマンスを支えるほか、高度な医療、リハビリ、分析に合わせて衣食住も整う。卓球やフェンシング、バドミントンなど専用施設の利用度は他競技に比較しても高く、新体操「フェアリージャパンPOLA」の選手は、JISSで通年合宿を行ってコンビネーションを徹底的に強化してきた。

 東京五輪を目前に、3月は一日の利用者が600人を超えたほど、トップ選手の施設への依存度は高かった。

 瀬戸は「水泳選手は所属クラブ、大学のプールも使えず、まったく泳げていない。不安が大きいとの声があがっている」と、プールの早期再開を訴えた。またバレーの荒木はただ1人チーム球技の代表として、「日本の持ち味である連係ができない」と、戦術の共有が困難な状況を説明。NTC利用が多い卓球・水谷は「卓球はNTCがメインの練習場」と話した。

 東京では緊急事態宣言が続行中で、自粛要請も解かれていない。たとえ緊急事態宣言が解除されても、施設が集中し共同生活を送る場所ゆえに、全面再開へのハードルは、一般施設以上に高いともいえる。地下1階から3階までビルのフロアごとに複数の施設がある屋内競技の「3密」を危惧する声や、

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