小田博士(おだ・ひろし) 神奈川県大和市議会議員 元産経新聞記者
1975年1月生まれ。神奈川県大和市出身。上智大学経済学部経営学科卒業後、産経新聞社に入社。整理部を振り出しに千葉総局(県警、県政)、社会部(文部科学省、司法)、政治部(官邸、与党、野党、防衛省など)で記者生活16年。国政、地方行政、選挙や教育問題をはじめ様々なジャンルを取材した。記者の経験を活かして郷土の発展に尽くしたいと政治家に転じ、2015年4月に大和市議会議員に初当選。現在2期目(自民党)。
市長が「専決」で制定。コロナ緊急事態での地方自治の在り方とは
新型コロナウイルス感染症は、世界中に混乱をもたらし、私たちが暮らす地域社会を揺るがせている。改正新型インフルエンザ等対策特別措置法は、地方自治体に大きな権限を与える枠組みとなっており、特措法に基づく政府の緊急事態宣言発令は、地方自治や首長のあり方を問うことになった。
私が市議会議員を務める神奈川県大和市では4月16日、大木哲市長の発案から、「おもいやりマスク着用条例」が公布、施行された。
議会に諮らない専決処分だった。
大木市長は「全国初」事業へのこだわりが人一倍強く、コロナ問題では、消毒用の次亜塩素酸水の配布、歯科医師が参加するPCR検査といった独自の対策を、他自治体に先駆けて打ち出している。スピーディーな取り組みは市長の評価を高める一方、「非常時とはいえ、首長が理念条例を専決処分してよいのか」といった、地方自治上の問題点も浮き彫りにしている。
カーン、カーン、カーン、カーン…。
大和市では週末の午後7時、市内90カ所の防災行政無線のスピーカーから、鐘の音が鳴り響く。新型コロナウイルスの治療にあたる医療従事者に感謝の意を伝えるための取り組みで、東京・銀座の和光の時計塔が実施する「命の鐘アクション」に賛同したものだという。プロレスラーの引退や追悼時に行われるテンカウントゴングのような重苦しい響きは、今の日本が「準戦時体制」にあることも連想させる。
大和市は、神奈川県のほぼ中央に位置している。小田急江ノ島線、東急田園都市線、相鉄線の私鉄3線が乗り入れ、都心の渋谷や横浜まで約30分。人口23万人のベッドタウンだ。海上自衛隊と在日米海軍が共同利用する厚木基地を抱え、渋滞の名所として知られる東名高速・大和トンネルがある。
サッカーの女子ワールドカップ日本代表選手を数多く輩出したことで名高く、市は「女子サッカーのまち」を売りにする。
2016年11月には図書館や市民ホール、生涯学習センターなどが同居する文化複合施設「シリウス」がオープン。市外からも多くが訪れるランドマークとなっている。市は「図書館城下町」を標榜するが、この施設も現在、コロナ禍への対策で休館となっている。
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