「野球の楽しみ」を得て次のステージへ
2020年05月22日
第102回全国高校野球選手権大会、および、地方大会の中止が決まった。
新型コロナウイルスの感染拡大に、日本高校野球連盟としても対処しきれないという末の苦渋の決断だっただろう。いまだ部活動が再開できていない今の状況を考えると致し方ない決定だが、5月20日に大会の運営委員会を行いそこで開催の可否を協議すると発表しておきながら、事前に中止の情報が漏れたことは、日本高校野球連盟の失態だと言っていい。
高校球児や彼らを支える指導者や保護者らの心情を察すると、こうした歴史的決定は日本高野連から伝えるのが筋というものだ。連盟内部の者がメディアに情報をリークしたとしたら、その人物のモラル、それを許した連盟全体の体質は改めなければいけない。高校球児は大人の道具ではないのだ。
これで、今年は春のセンバツ大会に続いての中止が決まり、春夏連続で全国大会が開催されない初の事態になった。現役の高校3年生にとって最も不幸なのは、この二つの全国大会だけでなく、今年は各地区の春季大会も開催されていない(沖縄は準々決勝まで開催も打ち切り)から、昨秋の大会以降公式戦の舞台を一度も踏むことができなかったという事実である。
スポーツをしていて、最も楽しみを得られるのは、試合をすることだと個人的には思う。練習の成果を発揮する、あるいは、試合を通して出た課題を明らかにすることで、また自己研鑽に励むことができる。読んで字の如く、自分たちの力を「試し」「合う」ことの喜びは、スポーツで得られる最も幸せな時間と言えるだろう。
ところが、今年の3年生は、その時間をほとんど得ることができなかった。世界中を巻きこんだ新型コロナウイルスの猛威は我々から「日常」の多くを奪い、野球界は多くものを失った。「野球の楽しみ」を今の高校3年生に感じさせてあげられなかったことに忸怩たる思いを抱いている関係者は少なくないはずだ。
とはいえ、中止が決まる以前から、球児のための動きが少しずつ起きている。愛知県は独自の県大会を開催することを発表。すでに開催の検討を表明している岡山県に加え、香川県なども開催の意向を示している。
高校3年生のために、集大成の大会を開催しようという姿勢は評価されるべきだ。依然、コロナウイルスとの戦いは続いているが、自粛することだけが戦いではない。日常を取り戻しながらウイルスに勝つことをこれからは目指していかなければならず、学校の再開を目指しながら、「野球の楽しみ」を知る絶好の機会を創出してもらいたいものだ。
ただ、高校3年生が受験生であることを鑑みると、そう簡単なことではない。大会を開催するとしても、感染予防対策を含めかなりの準備期間を要し、また、大会のあり方も検討しなければいけないだろう。そこで二つのことを提案したい。
ひとつは大会の試合形式をリーグ戦にするというものだ。
有料会員の方はログインページに進み、朝日新聞デジタルのIDとパスワードでログインしてください
一部の記事は有料会員以外の方もログインせずに全文を閲覧できます。
ご利用方法はアーカイブトップでご確認ください
朝日新聞デジタルの言論サイトRe:Ron(リロン)もご覧ください