メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

夏の甲子園中止で、3年生に試合を体験してもらうための2つの提案

「野球の楽しみ」を得て次のステージへ

氏原英明 スポーツジャーナリスト

 第102回全国高校野球選手権大会、および、地方大会の中止が決まった。

 新型コロナウイルスの感染拡大に、日本高校野球連盟としても対処しきれないという末の苦渋の決断だっただろう。いまだ部活動が再開できていない今の状況を考えると致し方ない決定だが、5月20日に大会の運営委員会を行いそこで開催の可否を協議すると発表しておきながら、事前に中止の情報が漏れたことは、日本高校野球連盟の失態だと言っていい。

 高校球児や彼らを支える指導者や保護者らの心情を察すると、こうした歴史的決定は日本高野連から伝えるのが筋というものだ。連盟内部の者がメディアに情報をリークしたとしたら、その人物のモラル、それを許した連盟全体の体質は改めなければいけない。高校球児は大人の道具ではないのだ。

 これで、今年は春のセンバツ大会に続いての中止が決まり、春夏連続で全国大会が開催されない初の事態になった。現役の高校3年生にとって最も不幸なのは、この二つの全国大会だけでなく、今年は各地区の春季大会も開催されていない(沖縄は準々決勝まで開催も打ち切り)から、昨秋の大会以降公式戦の舞台を一度も踏むことができなかったという事実である。

大会中止の決定を聞く明徳義塾(高知)の部員たち=2020年5月20日、高知県須崎市、代表撮影 
 拡大大会中止の決定を聞く明徳義塾(高知)の部員たち=2020年5月20日、高知県須崎市、代表撮影

 スポーツをしていて、最も楽しみを得られるのは、試合をすることだと個人的には思う。練習の成果を発揮する、あるいは、試合を通して出た課題を明らかにすることで、また自己研鑽に励むことができる。読んで字の如く、自分たちの力を「試し」「合う」ことの喜びは、スポーツで得られる最も幸せな時間と言えるだろう。

 ところが、今年の3年生は、その時間をほとんど得ることができなかった。世界中を巻きこんだ新型コロナウイルスの猛威は我々から「日常」の多くを奪い、野球界は多くものを失った。「野球の楽しみ」を今の高校3年生に感じさせてあげられなかったことに忸怩たる思いを抱いている関係者は少なくないはずだ。

第102回全国高校野球選手権大会の中止について、インターネットを通じて記者会見する大会副会長の八田英二・日本高野連会長=2020年5月20日午後、大阪市西区20200520O拡大第102回全国高校野球選手権大会の中止について記者会見する八田英二・日本高野連会長=2020年5月20日

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

氏原英明

氏原英明(うじはら・ひであき) スポーツジャーナリスト

1977年、ブラジル・サンパウロ生まれ。奈良新聞記者を経て、2003年からフリーランスに。著書に『甲子園という病』(新潮新書)。『メジャーをかなえた雄星ノート』(文藝春秋)の企画・構成を担当している。