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9月入学って、本当にやるんですか?

未来への投資である教育にきちんと予算と人を付けて、持続可能な社会の創り手を育もう

住田昌治 横浜市立日枝小学校校長

 「今一番優先して議論しなければいけないのは、遅れてしまった子供たちの学びを取り戻すことだ」。自民党の若手議員ら60人が慎重対応を求めて、9月入学について「拙速な議論に反対する」との要望書を岸田文雄政調会長と稲田朋美幹事長代行に手渡した後、小林史明青年局長が記者団にこう語ったそうです。

 9月入学について、文部科学省は、来年9月の導入を想定した「一斉実施」「段階的実施」の2案を提示し、自民党のワーキングチームでも検討が進んでいます。そして、政府は6月上旬にも方向性を打ち出すのではないかと言われています。

子どもたちを待ち続けた花も枯れ始めた

「行政はコロナ騒動に便乗して、無茶苦茶なことを言い始めている」

 「9月入学のことが話題になっているけど、どう思う?」と、学校で教職員に聞いたり、保護者に聞いたりしても、「うーん」と反応はあまりありません。保護者は、「修学旅行に行けないのは可哀そうだけど、中には、修学旅行がなくなった方がいいと言っている子もいるので、この機会に子どもに聞いてみてもいいかもしれませんね。保護者は、修学旅行や運動会を子どもは楽しみにしていると思っていますが、そう思っていない子もいるかもしれませんしね」と。

 そういえば、教職員に小学校の時に運動会が好きだったか聞いた時、嫌だったという人が多かったことを思い出しました。私も、やらされ感があって、そんなに好きではありませんでした。何でもそうですが、一方的な大人の思い込みは危険です。

 また、校長会で話題にしようとしても、「それどころじゃないでしょう。課題の受け渡しやプリントの配布、分散登校の仕方や感染予防のための準備、学校再開スタートプログラム(心のケア、生活リズム、仲間づくり等)、未履修や家庭学習課題の補習、授業の準備、課題の準備、オンライン授業の準備、オンライン会議の準備、様々なアンケート調査、教職員の仕事分担、教育課程の再編成等々、考えること話し合うことやることで一杯一杯。そんなこと、考えている暇はない。今、そんなことを言っている暇があるのは、政治家と教育評論家とかでしょ。暇があるなら、学校の消毒作業を手伝ってほしいよ」と、現場のことを知らな過ぎるという反応でした。

 「行政は、必要なことをどんどん削減して、これまでさんざん現場任せにしておきながら、コロナ騒動に便乗して、無茶苦茶なことを言い始めている。学校現場も大変だけど、文科省も検討することが多い状況なのに、上乗せしてやらなければならないことが増えて大変だと思うよ。国はSDGsとか言っているけど、持続可能じゃないよね」と話してくれたベテラン校長もいました。

 私も、以前9月学校再開になってしまうかもしれないということを書いたことがありますが、それは感染が拡大して最悪の場合には夏休みまで休校が続いてしまったら、結果的にそうなるかもしれないという意味でした。しかし、休校をしていない学校があったり、早めに再開した学校があったりと、休校期間も全国で一律ではないので、9月一斉スタートというのも難しいと思っていました。

政治判断で決定するようなら現場は大混乱に

 そもそも、4月から8月までは空白の期間となってしまいます。いろいろ問題はあるとしても、何とか学びを続けようと工夫してきた学校や家庭、子ども達は、何をしていたことにするのでしょうか。そんなことを考えていたら、じゃあ来年からやるという話が出てきて、どんどん話が進んで

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