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学生支援で「水際作戦」をする気なのか

給付金「申請の手引き」から浮かぶその実態とは

田中駿介 東京大学大学院総合文化研究科 国際社会科学専攻

仕送り額の「線引き」は適切か

 さて、申請方法に戸惑った給付金制度であるが、本当に問題なのはその申請方法ではなく文科省が設定した「要件」である。

 以下が、今回の給付に際し、文科省が設定した条件である。

(1)家庭からの仕送り額が年間150万円未満(授業料を含む)である
(2)原則として自宅外で生活している
(3)生活費・学費に占めるアルバイト収入の割合が高い
(4)家庭の収入減少等により、家庭からの追加的支援が期待できない
(5)新型コロナの影響でアルバイト収入が大幅に減少している(前月比で50%以上減少)
(6)既存の支援制度を利用している(留学生を除く)

(注3)

 そもそも「(授業料を含めて)年間150万円」の仕送りという「線引き」は適切なのだろうか。

 ここでは、(「原則」としてではあるが)支給対象条件である「下宿生」に絞って議論をしたい。仕送りの平均金額は、月に約7万3千円すなわち年額87万円ほどである。しかし、この統計では、そもそもこの仕送り額に学費は含まれていない。2018年度の私立大学における初年度学生納付金(授業料+入学料+施設設備費)の平均は134万円、入学金を差し引いたとしても109万円ほどという計算になる。仮に、学生ではなく保証人が学費を負担しているとするならば、平均的な学生の「仕送り額(授業料を含む)」は「年間200万円」程になるだろう。

 では、その平均的な仕送り額で暮らす学生は、満足に勉強するだけの経済的余裕があるのだろうか。食費、住居費などの生活費以外で、勉学に充てていると想定される「書籍費」「勉学費」はそれぞれ、月1860円、月1900円である。果たして月4000円以下で、教科書を購入したり、学位論文を執筆するのに必要な資料を収集したりすることができるのだろうか。

 筆者は、現在学位論文の執筆を行っている。論文執筆に必要な資料は、主に高価な学術書や全集等であり、1冊あたり数万円するものもある。そして、週に1回ゼミで講読する書物も1冊5千円程度のものが殆どである。もちろん、新聞や雑誌等の購入費も勘案しなければならない。政治学を研究する立場にとって書籍等の資料は大変重要なものであるから、筆者の場合下宿先の4つの本棚はすでに満杯であるが、決してこれだけで「足りる」わけではないのである。

 さらに図書館が閉鎖されている現状に鑑みても、月4000円以下で勉学が可能だとは、到底思えない。

「減収証明」は可能なのか

 「家庭からの追加的支援が期待できない」という条件を満たさないと、受給の対象にならないという規定も、看過できない。これは、生活保護申請者に対し扶養義務を徹底させ、申請の受理そのものを拒否する、いわゆる「水際作戦」を想起させる

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筆者

田中駿介

田中駿介(たなかしゅんすけ) 東京大学大学院総合文化研究科 国際社会科学専攻

1997年、北海道旭川市生まれ。かつて「土人部落」と呼ばれた地で中学時代を過ごし、社会問題に目覚める。高校時代、政治について考える勉強合宿を企画。専攻は政治学。慶大「小泉信三賞」、中央公論論文賞・優秀賞を受賞。twitter: @tanakashunsuk

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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