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前田NHK会長の評判と役員人事、官邸との距離

官邸の圧力をかわし板野副会長を拒否したものの、『政治』シフトで報道姿勢は変わらず

川本裕司 朝日新聞社会部記者

拡大東京・渋谷のNHK放送センター

 1月に就任した前田晃伸NHK会長のもとで4月に選ばれた新しい理事、局長による新体制がスタートして1カ月余。5人連続の財界出身の公共放送トップとなった前田氏だが、これまでとは異なるタイプとの局内の声がある。新しい役員人事では会長に関連事業局をつけ、副会長が放送総局長を兼務する異例の布陣となった。NHKと政治との距離においては、前田会長は副会長人事での官邸の圧力に抗した、と複数のNHK関係者が証言している。ただ、理事人事は期待はずれという局内の声がある。

注目された役員担務

拡大NHK会長に選出され記者会見に臨む前田晃伸氏=2019年12月10日、東京都渋谷区
 新年度から常時同時配信「NHKプラス」が正式に始まって間もない4月14日に発表された役員人事(25日付)では、松坂千尋、中田裕之両理事が専務理事に昇格、6局長が理事に就任するとともに、専務理事と理事の計5人が退任し、世代交代が進んだ。新任の理事は担当局でそのまま昇任する形が多く予想通りといえサプライズがなかったなか、注目されたのは役員担務だった。

 これまでトップである会長には担務がついていなかったが、今回は関連事業局の担当がついた。また、最年少の理事から2月に副会長へ抜擢された正籬(まさがき)聡氏は放送の責任者である放送総局長を兼務することになった。正籬氏は編成局や大型企画開発センター、デジタルセンターなどを担当、番組編成やNHKスペシャルなどを決める立場になった。放送総局長は専務理事が兼務することが多かった。今回の会長や副会長の担務は前代未聞といえる。

 担当領域として前田会長はグループ経営改革統括、正籬副会長は放送統括などのほか人事制度改革統括と明記された。このことから、関連企業・団体の再編と人事制度のあり方に切り込んでいくことがうかがえる。前田会長は放送内容については正籬副会長に任せ、自らはみずほフィナンシャルグループ社長時代の経験を生かし関連事業の改革に注力していく構えと見られる。

拡大最年少のNHK理事から副会長に選ばれた正籬聡氏=2020年2月12日、東京都渋谷区
 正籬副会長が統括する人事制度改革は何をめざすのか。NHK幹部によると、前田会長の意向として、縦割りの是正と若手登用が打ち出されており、「年功序列の廃止」や「一律的な全国異動の見直し」「360度評価の導入」が伝わっている。評価システムを全面的に変える方針のようだ。現在のNHKの組織について「人事や技術の中間部門の人数がこんなに多いのか」と前田会長が感想を漏らした、と話すNHK関係者もいる。

 NHK幹部の話では、会長に内定した昨年12月の段階では「何で俺なんだ」と言っていたという前田会長は、年明けからはやる気を見せるようになったという。他人から指示されるのを嫌い、はっきりした物言いで自分で決断するタイプといわれる。報告のための会議に否定的で、紙に書いたことをそのまま報告する部下には帰るよう促したともいわれる。

 前田会長は高橋正美経営委員(常勤)に相談することもあるという。正籬副会長は机を前田会長の部屋にも置き、二人で一緒に話を聞くことも多い。

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筆者

川本裕司

川本裕司(かわもと・ひろし) 朝日新聞社会部記者

朝日新聞社会部員。1959年生まれ。81年入社。学芸部、社会部などを経て、2006年から放送、通信、新聞などメディアを担当する編集委員などを経て、19年5月から大阪社会部。著書に『変容するNHK』『テレビが映し出した平成という時代』『ニューメディア「誤算」の構造』。

 

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