官邸の圧力をかわし板野副会長を拒否したものの、『政治』シフトで報道姿勢は変わらず
2020年06月04日
1月に就任した前田晃伸NHK会長のもとで4月に選ばれた新しい理事、局長による新体制がスタートして1カ月余。5人連続の財界出身の公共放送トップとなった前田氏だが、これまでとは異なるタイプとの局内の声がある。新しい役員人事では会長に関連事業局をつけ、副会長が放送総局長を兼務する異例の布陣となった。NHKと政治との距離においては、前田会長は副会長人事での官邸の圧力に抗した、と複数のNHK関係者が証言している。ただ、理事人事は期待はずれという局内の声がある。
これまでトップである会長には担務がついていなかったが、今回は関連事業局の担当がついた。また、最年少の理事から2月に副会長へ抜擢された正籬(まさがき)聡氏は放送の責任者である放送総局長を兼務することになった。正籬氏は編成局や大型企画開発センター、デジタルセンターなどを担当、番組編成やNHKスペシャルなどを決める立場になった。放送総局長は専務理事が兼務することが多かった。今回の会長や副会長の担務は前代未聞といえる。
担当領域として前田会長はグループ経営改革統括、正籬副会長は放送統括などのほか人事制度改革統括と明記された。このことから、関連企業・団体の再編と人事制度のあり方に切り込んでいくことがうかがえる。前田会長は放送内容については正籬副会長に任せ、自らはみずほフィナンシャルグループ社長時代の経験を生かし関連事業の改革に注力していく構えと見られる。
NHK幹部の話では、会長に内定した昨年12月の段階では「何で俺なんだ」と言っていたという前田会長は、年明けからはやる気を見せるようになったという。他人から指示されるのを嫌い、はっきりした物言いで自分で決断するタイプといわれる。報告のための会議に否定的で、紙に書いたことをそのまま報告する部下には帰るよう促したともいわれる。
前田会長は高橋正美経営委員(常勤)に相談することもあるという。正籬副会長は机を前田会長の部屋にも置き、二人で一緒に話を聞くことも多い。
1月25日に就任してから新役員体制ができるまでの3カ月で、前田会長の局内イメージは固まりつつある。あるベテラン職員は
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