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劇場を飛び出したバレエ

世界中のバレエ・ダンサーたちの映像配信、部屋から、街から、自然のなかから

菘あつこ フリージャーナリスト

 〝バレエ〟は基本的には劇場の舞台で踊り、観客に観せるもの。だけど今、インターネット上にそうではない場所で踊る映像が多々配信されている。ダンサー達が暮らす部屋のなかで、集合住宅の階段で、近所の公園や海辺などの自然のなかで……。

ダンサーたちの配信動画

 今、芸術の動画配信に対する行政の支援が打ち出され始めているけれど、ダンサーたちの画像が目に付き始めたのは、もう少し前から。「Stay at Home」を余儀なくされるなかで、仲間うちでの近況報告のようなものをはじまりに、FacebookやInstagram上にトレーニング風景や、踊りの短い部分がアップされるようになってきていた。

 バレエというのは、身体を使う芸術だから、スポーツ同様に毎日のトレーニングは欠かせない。週に1日程度休養日をつくるとしても、毎日、最低、1時間30分ほどの基礎のレッスンは必須。「一日休めば自分にわかり、二日休めば周囲にわかり、三日休めば観客にわかる」は、森下洋子さんの有名な言葉だ。

 海外の主要バレエ団では、所属ダンサーの要望に応じて、自宅でトレーニングができるようにバレエに適した床材であるリノリウムを支給するなどもしているようだ。

 本来ならば、基本のレッスンも、特に後半には、大きなジャンプなどをすることが理想で、ある程度の広さが必要なものだが、今、世界中のダンサーたちは、自分の部屋などの限られた空間で工夫しながらできる範囲のトレーニングを行っている。

 少し動きの軸が傾こうものなら周りの家具をなぎ倒すのではないかと思うようなスペースで、真っ直ぐな軸でのトゥ・シューズのつま先立ちでコマのように回るダンサーの映像を見ていると、「やっぱりバレエダンサーはスゴい!!」と(私も一人自宅で)、叫んでしまう。

 一人での動画が大半だが、なかにはピッツバーグ・バレエのJessica McCannさんと中野吉章さんのように夫婦でのパ・ド・ドゥ(二人で組んでの踊り)などをアップしてくれている例もある。

拡大Jessica McCannさんと中野吉章さんのインスタグラム動画から
https://www.instagram.com/p/B_imW9Zg38p/?igshid=bz0jy28cmfqk

〈バレエダンサーの配信の例〉

ピッツバーグ・バレエのJessica McCannさんと中野吉章さん 
アメリカ、ボストン・バレエの倉永美沙さんのレッスン風景(1)(2)(3)(4)
アメリカ、木村綾乃さんのお部屋でのHIPHOPやダンサーコラボ等(1)(2)(3)(4)  

 自粛が長引くなか、バレエ団によっては、一つの曲を楽団が演奏しダンサーが踊る、一人ひとり(カップルの場合も)の動画を組み合わせて、映像作品にして配信するようなものも出てきていて、とても興味深い。

サンフランシスコ・バレエ、ダンサー&オーケストラ テレワーク(倉永美沙さんなど)
ピッツバーグ・バレエ・シアターのダンサー達(中野吉章さんなど) 


筆者

菘あつこ

菘あつこ(すずな・あつこ) フリージャーナリスト

立命館大学産業社会学部卒業。朝日新聞(大阪本社版)、神戸新聞、バレエ専門誌「SWAN MAGAZINE」などに舞踊評やバレエ・ダンス関連記事を中心に執筆、雑誌に社会・文化に関する記事を掲載。文化庁の各事業(芸術祭・アートマネジメント重点支援事業・国際芸術交流支援事業など)、兵庫県芸術奨励賞、芦屋市文化振興審議会等行政の各委員や講師も歴任。著書に『ココロとカラダに効くバレエ』。

 

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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