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次亜塩素酸水 「信心」ではコロナ対策はできない

エビデンスもなく「対策してるんだから」と思い込む危うさ

赤木智弘 フリーライター

 6月9日付で本文に訂正と追記を加えました

 永らく続いた新型コロナの騒動も、先日の緊急事態宣言の解除で徐々に落ち着きつつある。

 もちろん予断は許さないものの、局面はすでにアフターコロナに移っており、新型コロナの問題を抱えつつも経済活動を積極的に行う時期に来ている。これまでは閑散としていた街にも人が増え始め、自分がランチなどによく行っていた店も、今は客足が戻っているようだ。

 そのような状況で、僕が新型コロナに関連した話で懸念していることがある。それは「次亜塩素酸水」の存在である。

拡大経済産業省が次亜塩素酸水の噴霧についてまとめた資料。WHOの見解として「消毒剤を人体に噴霧することは、いかなる状況であっても推奨されない」と書かれている

有効性は定かではなく、かつリスクの存在を否定できない

 次亜塩素酸水とは塩酸や食塩水を電解することにより得られる、次亜塩素酸を主成分とする水溶液である。殺菌効果があることから消毒用アルコールが不足していた頃に市場に出回り、代用品として注目された。

 僕は次亜塩素酸水が新型コロナウイルスに対して効果があるとする科学的根拠が存在しない事を知っていたので、極力避けていた。

 しかし、小売店などの店頭に置かれていた消毒用アルコールがいつの間にか次亜塩素酸水に入れ替わっていたり、また店員が店頭で手に次亜塩素酸水を吹き付けてくる店もあった。

 僕はこの手の消毒液を手指に噴霧してしまったり、されたりしたら、まずは臭いを嗅いで、アルコールのツンとした臭いがすれば大丈夫。一方で特に臭いが無ければ、速やかにトイレに行ってしっかりと洗い流すことにしていた。

 しかし、最初は消毒用アルコールの代替物でしかなかった次亜塩素酸水だったが、いつしか空中に噴霧して「空間洗浄」を謳う商品まで現れ始めた。そしてそうした商品は「子供たちの健康を守るため」と称して、学校などの公共施設にまで導入され始めたのである。

 こうした状況に対し、5月29日に独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)は『「次亜塩素酸水」の空間噴霧について』と題された文書を出した。それによると、次亜塩素酸水に対するウイルス除去の有効性や安全性については国際的に確立された評価方法が見当たらず、現状では十分に判断できないということである。

 また、この文書の中で厚生労働省が「次亜塩素酸を含む消毒薬の噴霧については、吸引すると有害であり、効果が不確実であることから行わないこと。」としていることを提示している。このことから、次亜塩素酸水の噴霧については有効性は定かではなく、かつリスクの存在を否定できないと言うことが分かる。(注)

 NITEでは次亜塩素酸水の新型コロナへの「検証試験が継続中であり、まだ結論は出ていない」としているが、塩素濃度49ppmの次亜塩素酸水では20秒で感染力を1/1000に減少させたというデータもあるそうだ。では、効果はありそうかと言えば、効果よりもリスクの方が怖い。

 例えば、プールには消毒用の塩素が含まれているが、この基準は法令で定められており、0.4〜1.0ppm(mg/L)となっている。プールの塩素の独特な臭いを嗅いだ経験は多くの人にあると思うが、いくら新型コロナに効果がありそうと言っても、その50倍もの塩素濃度をもつ次亜塩素酸水をわざわざ手指に付けたいと思うだろうか。僕は遠慮させてもらいたい。

(注)引用部分は次亜塩素酸水ではなく次亜塩素酸ナトリウム液についての評価であるとの指摘を受けたので、取り消し線の箇所を削除します。安全性については「消毒液噴霧による人体への安全性については、確立された評価方法が存在していない」と明記されていることから、次亜塩素酸水の噴霧についても安全性を保証していないことは明らかであると思われます。また「次亜塩素酸水は消毒液ではない」という意見もありますが、ウィルスを不活化させる効果を次亜塩素酸水に期待する以上は、次亜塩素酸水も消毒液の1つとして扱われるべきであることは言うまでもありません。有効性が確認されているという記載もなく、したがって「次亜塩素酸水の噴霧については有効性は定かではなく、かつリスクの存在を否定できない」という結論に変更はありません(赤木追記2020.6.9)
 厚生労働省健康局結核感染症課の担当者に電話で取材したところ、「次亜塩素酸水による消毒は噴霧も拭き取りも推奨していません」との回答を得ました。「次亜塩素酸水を含むあらゆる消毒液について、安全性の点で噴霧は推奨していません。これはNITEのファクトシートにWHOやCDCの見解として書かれている通りです。次亜塩素酸水による拭き取りについては噴霧よりは人体への影響は少ないと考えられますが、やはり安全性についても、効果そのものについても未確認ですので推奨はしていません」とのことです(編集部追記2020.6.9)

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筆者

赤木智弘

赤木智弘(あかぎ・ともひろ) フリーライター

1975年生まれ。著書に『若者を見殺しにする国』『「当たり前」をひっぱたく 過ちを見過ごさないために』、共著書に『下流中年』など。

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