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コロナ「第2波」へ全国民PCR検査と感染追跡システムで背水の陣の中国

「第1波」の初動は落第点。「第2波」では失敗は許されない

浦上早苗 経済ジャーナリスト、法政大学MBA実務家講師、英語・中国語翻訳者

拡大中国・湖北省武漢市で「全員検査」のために市内の運動場に設けられた臨時のPCR検査場=2020年5月22日、平井良和撮影

 6月5日、北京市は武漢市がある湖北省からの移動制限を解除すると発表した。

 湖北省の封鎖解除が始まった3月25日以降、北京市は同省から入ってくる人の人数を厳しく制限してきた。乗車前のPCR検査はもちろん、座席は指定、列車内でも検温を行い、列車が入ってくる北京西駅内では専用通路ももうけた。6月6日以降は、乗車時の検温やマスク着用、換気消毒は続けるものの、制限なく自由に移動できるようになる。

高まる中国への警戒感・嫌悪感

拡大『新型コロナ VS 中国14億人』(小学館新書)
 筆者は中国人と新型コロナウイルスの戦いを描いたドキュメンタリー『新型コロナウイルス VS 中国14億人』(小学館新書)を今月上梓した。

 突然現れたこのウイルスは、これまでも緊迫していた米中関係をいっそう悪化させた。さらに、香港で反体制的な言動を取り締まる「国家安全法制」の導入決定によって、米国だけでなく世界との分断が加速し、中国への警戒感、嫌悪感はこれまでにないほど高まっている。

 ただ、ここで強調しておきたいのは、初動の遅れが招いた武漢でのパンデミックと全国への拡大の最初の犠牲者は、政治とは関係のない14億人の普通の人々であり、何も分からないまま未知のウイルスとの戦いを強いられた医療関係者だったことだ。

 著書では、世界で最初に感染が拡大し、都市封鎖を経験した中国で、医療関係者や企業、庶民がどうウイルスと対峙(たいじ)したかを描いている。他国の対応を知ることは、「アフター・コロナ」での日本の立ち位置を考えるうえでも必要だからだ。本稿では、著書には収めきれなかった、経済を再開させながらも「第2波」を想定して準備を進める中国の現在の状況を紹介したい。


筆者

浦上早苗

浦上早苗(うらがみ・さなえ) 経済ジャーナリスト、法政大学MBA実務家講師、英語・中国語翻訳者

早稲田大学政治経済学部卒。西日本新聞社を経て、中国・大連に国費博士留学(経営学)および少数民族向けの大学で講師の職に就き6年滞在。新聞社退職した時点でメディアとは縁が切れたつもりで、2016年の帰国後は東京五輪ボランティア目指し、通訳案内士と日本語教師の資格取得をしましたが、色々あって再びメディアの世界にてゆらゆらと漂っています。市原悦子演じる家政婦のように、他人以上身内未満の位置から事象を眺めるのが趣味。未婚の母歴13年、42歳にして子連れ初婚。最新刊「新型コロナ VS 中国14億人」(小学館新書)

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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