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コロナ「第2波」へ全国民PCR検査と感染追跡システムで背水の陣の中国

「第1波」の初動は落第点。「第2波」では失敗は許されない

浦上早苗 経済ジャーナリスト、法政大学MBA実務家講師、英語・中国語翻訳者

武漢市では2週間で990万人をPCR検査

 北京市が湖北省からの移動制限を解除したのは、二つの理由がある。

 ひとつは、中国最大の政治イベントである全国人民代表大会(全人代)が5月28日に終了したからだ。

 北京市は全人代まで極めて厳しい感染症対策を導入し、「首都防衛」を続けてきた。5月前半には中学3年生の登校が再開したが、登校初日の検温で8.4万人の生徒のうち125人の発熱を確認すると、それぞれの家庭に連絡を取り、全員PCR検査をしたほどだった(全員が陰性だった)。

 北京在住の会社員男性は5月下旬、「全人代が開かれたってことは、安全だということ」と話した。それまでの対策によって、今後、感染者が流入しても拡大を抑えられる確信を得たのだろう。

 湖北省からの移動を自由化したふたつ目の理由は、武漢市全市民のPCR検査実施だ。

 武漢市は4月、感染症対策の前線を担い、クラスターにつながりやすい職業である医療関係者、介護施設関係者、警察官、教師、公共交通機関の労働者を対象に全員検査を行った。また、同月8日の武漢封鎖解除後も、「社区」と呼ばれる自治会単位での封鎖は続けていた。

 にもかかわらず5月中旬、武漢市の住宅街で5人の集団感染が発生、地区の責任者が更迭される事態となった。危機感を強めた当局は、全市民の一斉検査に踏み切ったのだ。具体的には、5月14から6月1日までの半月で約990万人のPCR検査を行い、無症状感染者300人を確認した。4月に検査を済ませていた人も含めると、ほぼ全市民の検査を終えたという。

 武漢市在住の男子大学生は「検査スタッフが団地までやってきて、団地の住民は同じ日に検査を受けた。うちも家族3人皆検査しました。市内の別のところに住む親戚は、違う日に検査を受けた。そこでは検査スタッフが一軒一軒訪問したそうです」と話した。

 筆者の著書で登場する武漢市の大学で日本語を教えている田辺さん(仮名)は、武漢での「第2波」発生に備えて食料を備蓄していたが、全員検査によって「武漢市が一番安全なんじゃないか。外部からウイルスを持ち込まれる方が怖い」と考えるようになった。

拡大中国・湖北省武漢市の「全員検査」のために商業施設に設けられた臨時のPCR検査場。血液を採る抗体検査も実施されていた=2020年5月21日、平井良和撮影

念のために3度目のPCR検査を受けた日本人

 PCRの検査体制がなかなか整備されない日本では、990万人の検査を2週間で実施できることが信じられないかもしれない。武漢市も当初はPCR検査キットがなく、症状がある人をスムーズに検査できるようになったのは2月中旬以降だ。その後は、検査体制を急速に充実させ、3月中旬には入国者全員に検査できるところまで広げた。

 湖北省に次いで感染者が多かった広東省も検査体制の拡充に力を入れた地域の一つで、1日の検査可能人数は湖北省に次いで中国で2番目に多い。

 同省は6月3日までに944万人のPCR検査を実施、検査拠点は555カ所まで増えた。

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 日本企業の駐在員として広州市(広東省)に赴任している谷村さん(仮名)は、3月26日に東京から広州に戻って以降、これまで3回検査を受けた。
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筆者

浦上早苗

浦上早苗(うらがみ・さなえ) 経済ジャーナリスト、法政大学MBA実務家講師、英語・中国語翻訳者

早稲田大学政治経済学部卒。西日本新聞社を経て、中国・大連に国費博士留学(経営学)および少数民族向けの大学で講師の職に就き6年滞在。新聞社退職した時点でメディアとは縁が切れたつもりで、2016年の帰国後は東京五輪ボランティア目指し、通訳案内士と日本語教師の資格取得をしましたが、色々あって再びメディアの世界にてゆらゆらと漂っています。市原悦子演じる家政婦のように、他人以上身内未満の位置から事象を眺めるのが趣味。未婚の母歴13年、42歳にして子連れ初婚。最新刊「新型コロナ VS 中国14億人」(小学館新書)

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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