増島みどり(ますじま・みどり) スポーツライター
1961年生まれ。学習院大卒。84年、日刊スポーツ新聞に入社、アマチュアスポーツ、プロ野球・巨人、サッカーなどを担当し、97年からフリー。88年のソウルを皮切りに夏季、冬季の五輪やサッカーW杯、各競技の世界選手権を現地で取材。98年W杯フランス大会に出場した代表選手のインタビューをまとめた『6月の軌跡』(ミズノスポーツライター賞)、中田英寿のドキュメント『In his Times』、近著の『ゆだねて束ねる――ザッケローニの仕事』など著書多数。
2011年ドイツW杯で世界チャンピオンとなった女子サッカーにとって、大きな節目となる発表である。本来ならば、広い会見場にひな壇をしつらえ、何人かの選手がリーグ名をアピールしたに違いない。
6月3日、日本サッカー協会(JFA)の女子サッカープロリーグ「WE(ウィー)リーグ」の発表会見は、時世を象徴するようにオンライン会見となった。選手が除幕するはずだった新リーグの名称・ロゴは、W杯優勝監督の佐々木則夫リーグ設立準備室長が小さなボードを手元で、PCカメラに向かって控えめに掲げて披露された。
WE、は「Women Empowerment」の略で、女性の活躍、社会進出、男女平等において「みんな(WE)が主人公に」との願いが込められている。教育現場でも議論がされているが、女子サッカーは21年9月スタート(22年5月まで)と、国内サッカーでも、日本のスポーツ界でもこれまでになかった「秋春シーズン制」を導入する。
現行の「なでしこリーグ」のクラブも含め、7月までプロ参加を希望するクラブを募り、10月に6~10をめどに新リーグへの参加を発表する予定。クラブは、Jリーグ発足時の理念同様地域密着で、自治体とクラブが一体となった市民のためのクラブ運営が基本理念となる。
昨年の経済フォーラム(WEF)の発表によれば、「ジェンダー格差」において、日本は世界121位と(調査対象153カ国)、前回の発表時よりも順位を落としてしまった。G7で最下位、アジアで中国、韓国より下位の国に誕生するプロリーグとして、今後は「チェアマン」ではなく、「チェアパーソン」といった名称を使う、女性の雇用率を高め、男子でも例にない「最低年俸」を保証するなど、強化だけではない価値を創出する方針だ。
発表会見では、橋本聖子五輪相、鈴木大地スポーツ庁長官が「日本の女子スポーツだけではなく、社会をリードして下さい」と、祝福と期待を込めてコメントを寄せた。
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