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京アニ放火殺人事件・青葉容疑者は勾留されるべきか

このような事件だからこそ、法の運用は公平かつ厳格でなければならない

前田哲兵 弁護士

 京都アニメーション放火殺人事件の青葉真司容疑者が、長い入院生活の後に、逮捕・勾留され、現在、捜査機関に身柄を拘束されている。

 「死者36名、負傷者33名という未曾有の事件を引き起こしたのだ。逮捕・勾留は当然だ。しっかりと取り調べ、1日も早く真相を究明してほしい」と、多くの人が思ったのではないだろうか。青葉容疑者が勾留されることに、特に疑問を抱かなかった人も多いかもしれない。

 しかし、今回の勾留は、法曹関係者の間では疑問の声が大きい。それはなぜか。

拡大取り調べを終え、ストレッチャーに乗せられ伏見署を出る青葉真司容疑者=2020年5月27日、京都市伏見区

刑事事件の流れ① 〜逮捕から勾留請求まで

 そもそも勾留とはどういう制度なのか。まずは、刑事事件の一般的な流れを整理してみよう。

 犯罪が起きると、警察が容疑者を「逮捕」し、48時間以内に身柄を検察官に送致する(刑事訴訟法203条1項)。俗にいう「送検(ソウケン)」だ。

 どうして警察は送検するのかというと、警察は自分たちでは起訴・不起訴の判断ができないからだ。我が国では、起訴は検察官だけができるとされている(刑事訴訟法247条)。そのため、起訴するかしないかを検察官に決めてもらうために送検するわけだ。

 さて、警察から容疑者を送致された検察は、容疑者をさらに身柄拘束する必要があると考えた場合には、24時間以内に、裁判所に「勾留請求」をすることになる(刑事訴訟法205条1項)。

刑事事件の流れ② 〜勾留請求から起訴まで

 勾留請求を受けた裁判所は、勾留の要件を満たしていると判断する場合には、勾留状を出し、容疑者は勾留される。勾留場所は、通常は警察署内にある留置施設だ。

 勾留期間は10日間以内だ。ただし、その間に検察官が容疑者を起訴するか否かを決められない場合には、さらに最大10日間延長できる(刑事訴訟法208条)。つまり勾留期間は最大で20日間だ。

 検察官は、この勾留期間が終わるまでに、容疑者を取り調べたり、証拠を集めたりして、最終的に容疑者を起訴するか、それとも不起訴にするかを判断する。勾留期間は絶対に守らなければならない。「捜査が間に合わなかったので、もう少し勾留させてください」という言い分は通らない。

 なぜ、そういった言い分が通らないのか。なぜ、法律は、ここまで厳しく身柄拘束の期間を制限しているのか。

 それは、逮捕や勾留といった身柄拘束は、対象者の人権を著しく制限するからだ。だから、身柄拘束というのは、無制限に認めてはいけないし、それが認められる要件は法律できちんと定められている。

 では、勾留が認められるための要件とは何か。

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筆者

前田哲兵

前田哲兵(まえだ・てっぺい) 弁護士

1982年、兵庫県生まれ。坂井・鵜之沢・前田法律事務所所属。相続や交通事故といった一般民事や刑事事件、企業法務の他、政治資金監査や選挙違反事件などの政治案件や医療事故も扱う。医療政策実践コミュニティー(H-PAC)医療基本法制定チームの筆頭、日本プロ野球選手会公認選手代理人、小中学校のスクールローヤーとしても活動中。著書に『業種別ビジネス契約書作成マニュアル』『交通事故事件21のメソッド』等

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