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なぜか再開しない大学の通常授業、「オンライン授業」では代替できない現実を報告する

コロナ緊急事態が解かれ、小中高校の授業が再開する中で

田中駿介 慶應義塾大学法学部4年

 「大学生は人生の夏休み」と、しばしば喧伝されることがある。たしかに、毎日決まった時間に職場に行き、決められた仕事をこなさなければならない立場からみたら、学生という「身分」はめぐまれているようにみえる、かもしれない。

 しかし、それは言ってしまえば「過去の物語」にすぎない。今の時代は、就職活動が早期化しており、いまや9割を超える学生が「インターンシップ」に参加するというデータもある。また学費が値上がりし続けており、困窮する学生が多いことは、コロナ禍でより顕在化した。そのうえ「オンライン授業」への移行により、さらなる負担が増えているという。

 「緊急事態宣言」が解除され、多くの小中高校では授業が再開された一方、大学では6割で「オンライン授業」のみの実施が続く(注)。「小中高校とは違い、大学はオンラインで代替しうる」と考えられているのだろうか。果たして「オンライン」で大学の授業は代替できるのか。改めて検証していきたい。

文部科学省「新型コロナウイルス感染症の状況を踏まえた大学等の授業の実施状況(令和2年6月1日時点)」から拡大文部科学省「新型コロナウイルス感染症の状況を踏まえた大学等の授業の実施状況(令和2年6月1日時点)」から

動画視聴にレポート、アルバイトの時間は?

 「一日、7~8時間はパソコンに向き合わなければなりません。正直、うつになりそうです」。今年の春から慶應義塾大学法学部に通う女性の悲痛な叫びである。「通う」といっても、入試以来、一度もキャンパスに足を踏み入れることが叶っていない、のであるが。

 彼女は、年間52単位分の授業を履修している。だいたい毎日平均すると、1日当たり4コマほどの授業を受講していることになるという。しかも、土曜日に開講されている授業も履修しており、週6日そのような状況が続いている。

 彼女が履修している授業の多くは、オンデマンド式、すなわち録画された動画を視聴する形態で行われている。動画視聴後、1コマあたり400~800字程度のレポートが課されることも多い。そうすると、月~土曜日は、授業の視聴に90分×4=6時間、さらに課題準備で3~4時間を要し、日曜日も課題準備に追われているという。このケースは法学部の場合であるが、レポートの分量がさらに多く課せられている学部もあるようだ。

 しかも、オンデマンド式の授業形式の場合、授業の内容をもとに友人と議論をしたり、教員に質問したりするハードルが高くなる。「学びを誰とも共有できないこともなかなか辛いことの一つ」だという。

 彼女が懸念しているのは、アルバイトとの両立である。彼女は、都内の公立高校出身であり、必ずしも裕福な家庭で育ってきたわけではない。「来月から学習塾のアルバイトをしようとしていました。でも、この状況が変わらないと厳しいです」

 学習時間が平時より増えることは、必ずしも否定すべきことではないだろう。しかし、コロナ禍により経済的格差が増大している現状に鑑みると、「レポート作成に、どれだけの時間をかけられるのか」「限られた予算のなかで、どのような文献を購入できるのか」は、経済状況によって規定されているといってよい。このままでは「経済格差」がそのまま「学習格差」になる状況が、より深刻になってしまう。

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筆者

田中駿介

田中駿介(たなかしゅんすけ) 慶應義塾大学法学部4年

北海道出身。政治哲学、戦後市民社会論を専攻。旭川東高校時代、政治について考える勉強合宿を企画。その後、政治教育について論じるようになり、慶大「小泉信三賞」、中央公論論文賞・優秀賞を受賞。twitter: @tanakashunsuk

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