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[42]世界中の路上生活者を支えた猫の死

「反貧困犬猫部」と「ボブハウス」

稲葉剛 立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科特任准教授

 6月15日、世界で最も有名な猫がロンドンで亡くなった。その死は、BBCやCNN等、世界各国のニュースで報じられた。

 猫の名は、ボブ。飼い主で作家のジェイムズ・ボウエンさんによると、ボブは「少なくとも14歳」だったという。

 ボブが有名になったのは、2012年、ボウエンさんの自身の経験を綴った著書『ボブという名のストリート・キャット』がベストセラーになったのがきっかけだった。

 2016年には、『ボブという名の猫』として映画化され、ボブ自身も映画に出演した。

「毎朝起き上がる理由」を与えてくれた猫

 薬物依存症に苦しみ、20代で路上生活におくっていたボウエンさんが茶トラの野良猫と出会ったのは、2007年。

 「ボブ」と名づけられた猫は、ボウエンさんに「毎朝起き上がる理由」を与えてくれたという。

 路上生活者の仕事をつくる雑誌「ビッグイシュー」を販売したり、路上でギターの弾き語りをしたりして生計を立てていたボウエンさんは、どこにでもボブを連れて行くようになった。

 やがて、ボブがボウエンさんとハイタッチをする姿が話題になり、取材が殺到。ボブとボウエンさんのコンビは人気者になっていった。

 ボウエンさんはフェイスブックで、ボブが薬物依存症からの回復を助けてくれたと感謝している。

 「ボブは相棒でいてくれた以上に、はるかにたくさんのものを僕にくれた。ボブがそばにいてくれたおかげで、自分が見失っていた方向性や目的を再発見できた」

 「ボブは本当に大勢の人に会って、何百万人もの人と心を通わせた。ボブみたいな猫は今までいなかったし、これからもいないでしょう。人生の光が消えたような気持ちです。ボブのことは決して忘れません」

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筆者

稲葉剛

稲葉剛(いなば・つよし) 立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科特任准教授

一般社団法人つくろい東京ファンド代表理事。住まいの貧困に取り組むネットワーク世話人。生活保護問題対策全国会議幹事。 1969年広島県生まれ。1994年より路上生活者の支援活動に関わる。2001年、自立生活サポートセンター・もやいを設立。幅広い生活困窮者への相談・支援活動を展開し、2014年まで理事長を務める。2014年、つくろい東京ファンドを設立し、空き家を活用した低所得者への住宅支援事業に取り組む。著書に『貧困の現場から社会を変える』(堀之内出版)、『鵺の鳴く夜を正しく恐れるために』(エディマン/新宿書房)、『生活保護から考える』(岩波新書)等。

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