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いま学校に取り戻さなければならないのは「子どもの楽しみ」だ

withコロナの時代、これまでの学校のままではもう持続可能ではない

住田昌治 横浜市立日枝小学校校長

再開からわずか2週間、なぜそんなに焦っているのか

 特に小学校1年生は、ランドセルを背負って登校することを夢にまで見ていたことでしょう。子どもだけでなく、親や家族、親戚までも心待ちにしていたのではないでしょうか。子ども自身も、学校への期待に胸を膨らませて、どんな場所なのか、どんなことをするのか、どんな人がいるのか(4月には、私を園長先生と呼ぶ子も多いです(笑))、学校でやる勉強というのはどうするのか、新しい友達ができるだろうか、毎日学校にちゃんと行って帰ってこられるだろうか…と、子どもながらに考えていたことでしょう。そんな子どもの楽しみを取り戻さなければ先には進めないのです。

 授業は、それからです。学校においてもラポールが築かれていなければ、授業がスムーズに行えないことは教員であればだれでも分かっています。子どもが安心して過ごせて、学校が楽しいと思え、先生や友達と話ができる状態にすることなし、授業は成り立ちません。

拡大密集する教室。分散登校が終わって全員登校が始まりました

 それは、小学校1年生に限った話ではなく、2年生以上でも、中学生でも、高校生でも、大学生でも、保育園でも、幼稚園でも…描いていた場所や学び、目標などは、新たな希望として楽しみだったのです。また、その子ども達に関わる教職員も、保護者も地域の方々にとっても楽しみだったのです。その楽しみを奪ったわけですから、まず、取り返さなければならないのではないでしょうか。

 それが、具体的にどんなことなのかは、当事者に聞かなければ分かりません。当事者が子どもであれば、大人が勝手に想像して決めつけたり、計画を立てて従わせたりしてはなりません。子どもからきちんと意見を聞いたり、様子を丁寧に見たりして、一緒に考えていくことです。コロナ禍による緊急事態は大人にも予測困難であり、何が正しいのか分からないのですから、子どもと大人がコミュニケーションをとりながら、一緒に解決策を考えていくというあり方に変えていかなければなりません。

 それにもかかわらず、大人が一方的に決めたことで、子どもの楽しみを取り戻すことなく、大人のために我慢させられてきた子ども達を、もっと苦しめようとしています。その先駆けとして、学校再開後、全国の学校の教職員が悲鳴を上げ始めました。文部科学省や各自治体の教育委員会は、好事例ばかりを取り上げて拡げていこうとするだけでなく、学校現場の実態をしっかり見て、かけ離れたことを言わないようにしないと、本当に大変なことになります。

 学習指導要領にしても授業時数にしても、増え続ける仕事にしても、大幅に削減する方針を出さなければ、多くの教職員が倒れ、辞めていくのではないかと心配しています。新たに教職を目指している人のためにもビルド&ビルドの働き方を止めて、ゆとりをもって働ける状況をつくっていかなければなりません。

 学校再開からわずか2週間。どうしてそんなに焦っているのでしょうか。授業の遅れを取り戻さなければならないという強迫、学びの保障を優先しなければならないという煽り、学校現場を、そして当事者である子どもを置き去りにした圧力が、学校現場をまた壊そうとしているようで心配です。文部科学省も教育委員会も学校現場もスクラップ&ビルドでなければ学校の新しい生活をつくっていくことはできません。学校現場の声に耳を傾け、まず、今学校で起こっていることを知って、考えて、動いてください。このままでは、子どもは益々やる気をなくし、委縮してしまいます。

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筆者

住田昌治

住田昌治(すみた・まさはる) 横浜市立日枝小学校校長

 2010年~2017年度横浜市立永田台小学校校長。2018年度~横浜市立日枝小学校校長。 ユネスコスクールに加盟し、ホールスクールアプローチでESDを推進。独自の切り口で実践を重ね、書籍や新聞等で取り上げられる。2015年度は、「もみじアプローチ」でESD大賞小学校賞を受賞。「円たくん」開発など、子どもや教師が対話的・能動的に学習参加し、深い学びにいたるために有効なツール開発と商品化にも積極的に関わる。  ユネスコスクールやESD・SDGsの他、学校組織マネジメントやサーバントリーダーシップ、働き方等の研修講師や講演、記事執筆等を行い、元気な学校づくりで注目されている。  ユネスコアジア文化センター事業推進委員、神奈川県ユネスコスクール連絡協議会会長、神奈川県環境教育研究会会長、全国小中学校環境教育研究会理事、未来への風プロジェクトメンバー、教育長・校長プラットフォームメンバー、横浜市ミニバスケットボール連盟参与を兼務。  著書に「カラフルな学校づくり~ESD実践と校長マインド~2019」(学文社)

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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