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東京23区は「ニュース砂漠」~大都市圏に広がる「取材空白地帯」

メディアが抱え込む「中央目線」取材体制の弊害

高田昌幸 東京都市大学メディア情報学部教授、ジャーナリスト

記者1人が5以上の区を担当することも

 日本の顔でもある千代田区の行政長に関する不正疑惑は、そんなにニュース価値がないのだろうか。そうかもしれないが、大手メディアの取材体制から眺めてみると、違う風景が見えてくる。簡単に言えば、区に関する取材体制の希薄さである。

 Gサーチで4本の記事がヒットした朝日新聞の場合、記者1人がおおむね3つの区を担当しているという。他の新聞も似たようなものだ。1人で5区以上を担当するケースもある。

 区単位でも取材分野は広範囲だ。区長や区議会、区の行政全般、教育・学校、保健衛生、商店街や地元企業、地域の話題、イベントなどおそろしく広い。仮に1人の記者が23区西部の世田谷区(人口約94万4千人)、杉並区(約58万8千人)、中野区(約34万4千人)の3区を担当する場合、人口は約187万6千人にもなる。これでは、まともな取材ができるはずがない。

 人口規模が同程度の札幌市(約190万人)には巨大なブロック紙・北海道新聞がある。福岡市と神戸市(いずれも約150万人)には、それぞれ西日本新聞、神戸新聞という確固たる地元紙がある。都道府県単位で見れば、世田谷区などの3区合計は、岡山県(約192万人)並みであり、そこには山陽新聞がある。

 こうした地方の新聞社は行政や議会、地元経済などの動きを十数人から数十人単位でカバーしており、取材の深さや幅広さ、情報の蓄積は、23区に関する各社のそれとは比べものにならない。

 区レベルの行政を丹念に追うメディアとしては「都政新報」があるが、行政職員向けの専門紙だ。インターネットメディアの「みんなの経済新聞ネットワーク」は23区内に30媒体を擁している。しかし、グルメ記事やエンタメ情報などが主体であり、区政や区内の問題点を洗い出すメディアではない。

 こうして23区は「ニュース砂漠」に陥っている。

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 全国紙ではニュースへの関心が「全国的なネタ」に著しく偏在し、その狭い範囲で同業者と激しい競争を続けてきた。「時間差スクープ」に熱を入れる文化は、その象徴だ。

 取材体制もそれを支える形で発達し、東京にいる圧倒的多数の記者は半世紀前も現在も「永田町・霞が関(政治、行政)」、「日本橋・丸の内(金融、民間経済)」などに配置されている。いずれも目線は「中央」に向いている。

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筆者

高田昌幸

高田昌幸(たかだ・まさゆき) 東京都市大学メディア情報学部教授、ジャーナリスト

1960年生まれ。ジャーナリスト。東京都市大学メディア情報学部教授(ジャーナリズム論/調査報道論)。北海道新聞記者時代の2004年、北海道警察裏金問題の取材班代表として新聞協会賞、菊池寛賞、日本ジャーナリスト会議大賞を受賞。著書・編著に『真実 新聞が警察に跪いた日』『権力VS調査報道』『権力に迫る調査報道』『メディアの罠 権力に加担する新聞・テレビの深層』など。2019年4月より報道倫理・番組向上機構(BPO)放送倫理検証委員会の委員を務める。

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