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人々を惑わせた新型コロナ禍でのジョギング なぜ、誤解が広がったのか

警鐘相次ぐ「マスクとスポーツ」

石井好二郎 同志社大学スポーツ健康科学部教授・同志社大学スポーツ医科学研究センター長

コロナ禍でのジョギング方法

 実際には日本においても、屋外でのジョギングは不要不急の外出に含まれておらず、厚生労働省の新型コロナ感染症対策専門家会議もジョギングを感染のリスクが低い活動と示していた。しかしながら、日本ではコロナ禍での運動方法についての説明がなされていなかったので、筆者は東北大学の永富良一教授、近畿大学の谷本道哉准教授とともに作成した動画の中で、屋外での運動を担当した。YouTube上(https://www.youtube.com/watch?v=npyAofi_xT4)で4月初旬に配信すると共に、その動画はNHKニュースでも取り上げられた。

・人が集まらない時間・場所でする
・他人とは1.8〜2m以上の距離を保つ

ジョギングにマスクの誤解拡大図3(石井教授提供)

・できるだけ1人で実施する

ジョギングにマスクの誤解拡大図4(石井教授提供)

 このような内容であり、コロナ禍での運動方法に困っていた方々を中心に歓迎された。

 一方で、「人々が外出自粛をしている時に、屋外での運動を促すとは何事か!」「息がかかっただけで感染するのに頭がおかしいんじゃないか!」など、攻撃的なコメントをテレビ局や掲載されたSNSによこす人もいた。(実際には、エアロゾル感染の可能性を指摘した研究者ですら、屋外ではウイルスは速やかに感染性が失われるため、パニックになるようなことではないと述べている)。

 東京大学ほかの研究グループが1月から6月初旬までにツイッターに投稿された新型コロナ関連の約2億件の投稿内容を分析したところ、この時期は「厭」(えん)や「怖」(ふ)といった負の感情が非常に高い状態が続いていたことが報告されている。目に見えないウイルスの存在に対する恐れから、不寛容な世の中になってきていることを痛感した出来事であった。


筆者

石井好二郎

石井好二郎(いしい・こうじろう) 同志社大学スポーツ健康科学部教授・同志社大学スポーツ医科学研究センター長

1964年3月、大阪生まれ。博士(学術)。広島大学助手、北海道大学講師・助教授・准教授を経て2008年4月より同志社大学スポーツ健康科学部教授。日本肥満学会、日本サルコペニア・フレイル学会、日本臨床運動療法学会などの理事。著書に「もっとなっとく使えるスポーツサイエンス」(講談社)、「からだの発達と加齢の科学」(大修館書店)、「使える筋肉・使えない筋肉 アスリートのための筋力トレーニングバイブル」(ナツメ社)、「サルコペニアがいろん」(ライフサイエンス出版)ほか多数。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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