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「賭けマージャン」問題 まず事実を明らかに 

問題の核心は記者が「誰を向いて、誰のために取材しているのか」という問いかけだ

外岡秀俊 ジャーナリスト、北大公共政策大学院(HOPS)公共政策学研究センター上席研究員

 東京高検の黒川弘務・前検事長が、緊急事態宣言下で賭けマージャンをして辞任した問題をめぐり、朝日新聞は発覚から1か月後の6月20日付朝刊で、「私たちの報道倫理 再点検します」という中村史郎・執行役員編集担当の文章を載せた。

 朝日新聞読者の多くはこの文章を読んで、「腑に落ちない」と思ったのではないか。

 大きなニュースを扱う場合、新聞記事は事実をストレートに記録する「本記」、事件の背景や事象への理解を助ける「解説」、社会の受け止め方や現場の雰囲気を伝える「雑感」記事という構成で、多面的にニュースを伝える。

 今回の文章は、「本記なき解説」、あるいは「経過説明なき結論」という調査結果だろう。

拡大朝日新聞6月20日付朝刊に掲載された「私たちの報道倫理 再点検します」という文章

「社内調査」結果を報告、反省点を明確にした産経新聞

 コロナ禍で緊急事態宣言が出され、政府が「不要不急」や「3密」を避けるよう呼び掛けているさなか、東京高検のトップが賭けマージャンをしていた。しかも、相手は朝日新聞社員1人と、産経新聞の社会部次長、記者の3人だった。時あたかも、黒川氏の処遇をめぐって検察庁法改正案が、国会で紛糾するさなかの出来事だ。読者としては、「当事者」となった新聞社が、どう説明責任を果たすのか、その点に注目したことだろう。

 産経新聞は6月16日、関係者の処分を発表すると共に、弁護士を含めた「社内調査」の結果を紙面で報告した。それによれば産経新聞の次長と記者は、5年ほど前にマージャンの場で朝日新聞社員と知り合い、3年ほど前から月に2、3回、固定したメンバーで、卓を囲むようになった。初めはマージャン店に行ったが、2年前の9月に記者が卓を購入し、その自宅に集まるようになった。緊急事態宣言下では7回、同じメンバーで集まり、少なくとも4回は夕方から翌未明まで、現金を賭けてマージャンをしたという。

 同紙は、外出自粛を呼びかけていた新聞社の記者がこうした行為をとったことを「不適切」と判断し、「新聞記者の取材」に対する読者の信頼感を損ねることを認めた。さらに、取材対象への「肉薄」は、「社会的、法的に許容されない方法では認められず、その行動自体が取材、報道の正当性や信頼性を損ねる」として、反省点を明確にした。

 残念ながら朝日新聞は、この産経新聞の報告を要約する形で、17日付の第2社会面で事実経過を報じただけだった。

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筆者

外岡秀俊

外岡秀俊(そとおか・ひでとし) ジャーナリスト、北大公共政策大学院(HOPS)公共政策学研究センター上席研究員

1953年札幌生まれ。1977年朝日新聞に入社。2011年に早期退職、現在は札幌を拠点とするフリージャーナリスト。