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新聞に“逆襲”のチャンスはあるのか

ニュース無料時代に有料デジタル版を成り立たせる戦略

校條 諭 メディア研究者

拡大Rawpixel.com/shutterstock

広告メディアとして成長した新聞

 新型コロナウイルス対策のための政府の緊急事態宣言下、紙の新聞はみるみる薄くなった。通常30ページ台だった朝日新聞の朝刊は、24ページがあたりまえになり、20ページの日まであった。記者や印刷工場など新聞製作に関わる現場に在宅勤務の影響が及んだり、スポーツ試合などが中止になって記事ネタが減ったせいもあるが、おもには広告が減ったからであろう。

 新聞とは広告メディアであるということを改めて思い知らされた。

 高度成長下の1975年、日本の新聞業界は、広告の市場規模をテレビに抜かれて王座の地位を譲ったが、新聞広告はテレビと棲み分けて成長を続け、それに伴ってページ数も増えていった。当時の新聞記者が「自分たちは広告の裏に記事を書いている」と自嘲気味に語ったという逸話が残っている。独立の編集権のもと、ジャーナリズムを担っていると自負している記者から見れば、不快な冗談だったかもしれないが、案外本質を衝いていた。

 「ニュースはウイルスと似た性格を持つ」と言ったら怒られるだろうか。

 ウイルスは、単独では生きにくい。特に戦後、大量生産・大量販売の市場経済の発達と軌を一にして、ニュースは、新聞や民放テレビという広告メディアを宿主として生息してきた。例外として、国民の義務として視聴料を徴収できる公共放送NHKという宿主があった。国家の体制によっては、国営のメディアを宿主とする“窮屈な”ケースもある。

無料のネットメディアがニュース配信の主役に

 新聞社のつくるニュース(記事)の立場で考えると、紙面というフォーマットを持った紙の広告メディアが宿主だったのが、近年、新聞社自身のウェブサイトもあるものの、大半の記事をネットで無料で配信するニュースメディアが有力な宿主となりつつある。Yahoo!ニュースやスマートニュースはその代表例である。

拡大スマホのニュースアプリのアイコン。新聞社など報道機関のデジタル版のほか、他媒体からの配信記事を集めるキュレーション型メディアが多い。ユーザーは大半の記事を無料で読める
 美術館・博物館には、作品を選んで展示する役割の学芸員がいて、キュレーターとも呼ばれるが、Yahoo!ニュースなどは同様の意味で、「キュレーションメディア」と呼べる。新聞社をはじめ、通信社や出版社などさまざまなメディアからニュースの配信を受けて、美術館の作品のようにニュースを選んで、自社のサイトに“展示”しているからである。ただし、ビジネスモデルとして見ると、読者から購読料を取らない広告メディアというのが基本性格である。

 ニュースが広告メディア向きであるのは、常に新規性があり更新が頻繁で、アクセス数をかせげるからである。つまり、ニュースは、日々大量のアクセスを呼び込むネタである。それらのニュースメディアのニュースを、読者は主としてスマホで無料で見る。

 では、人々はもはやニュースには金を払わないのだろうか。新聞は終わったのか。

 そのことを考える前に、歴史を振り返ってみることとする。

拡大タブレット端末で新聞のデジタル版を読む人(Hadrian/shutterstock)
拡大新元号「令和」の決定を伝える新聞の号外の配布に殺到する人たち

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筆者

校條 諭

校條 諭(めんじょう・さとし) メディア研究者

1948年、神奈川県茅ヶ崎市生まれ。73年、東北大学理学部卒。同年より野村総合研究所、ぴあ総合研究所(現文化科学研究所)で情報社会、メディア産業、消費者行動等の調査研究に従事。97年に起業したネットビジネス会社「未来編集」で、コミュニティサービス「アットクラブ」をNTTと共同開発し、オンラインマガジン発行。99年、ネットラーニングの事業化に参加。2005年から、ポール歩き(ノルディックウォーキング、ポールウォーキング)の普及に取り組む。12年、NPO法人「みんなの元気学校」設立。現在、ネットラーニングホールディングス社外取締役、インパクトワールド監査役、近未来研究会コーディネーター。主著に 『ニュースメディア進化論』(2019年、インプレスR&D)、編著書に『メディアの先導者たち』(1995年、NECクリエイティブ)など。