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報道ヘリは本当に邪魔なのか

ネットの言説を事実であるかのように思い込む前に自分の頭で考えなくてはならない

赤木智弘 フリーライター

 九州などで、記録的豪雨による河川の氾濫等の大きな自然災害が発生した。

 大規模な自然災害が発生すると、災害地には救助や輸送、情報収集や報道のためなど、様々な目的を持ったヘリコプターが活躍する。広域に広がる災害において、報道ヘリが果たす役割は大きい。

 映像を収めてニュースとして伝えることで、日本中、さらには世界の人たちに現状を知らせることができる。特に映像を電波で飛ばして現場からの生放送を行う技術は、放送局ならではのが一番得意とする技術である。

 また、災害の後始末が終わったとしても残った映像は被害全体の把握や、何がボトルネックになったかなどの調査、そして今後の災害防止のデータとしても活用できる。そして何より、日が過ぎれば忘れ去ってしまうことを、映像で保存することにより、後日からでも思い返すことができる。それにより、防災意識を高め、未来の被害を最小限に抑えることができるのである。

 もちろん、今回の災害でも当然たくさんの報道ヘリが活躍しているわけだが、ネットではとにかく評判が悪いのだ。

朝日新聞社が所有する報道ヘリ

報道ヘリは救助ヘリよりずっと高いところを飛んでいる

 まず「ヘリの音がうるさい」と言うが、それは本当に報道ヘリの音なのだろうか? 少なくとも僕は音だけでは何のヘリかなど分からないし、地上からヘリを見上げても、それが明らかに大型の輸送機であれば区別もつくが、普通のヘリの区別などつかない。相当なマニアでなければ区別はつかないのではないだろうか。

 報道のヘリがうるさいと言う人たちは、一体何の根拠があってそのヘリの音が報道のものであると断言しているのだろうか?

 だいたい音や見上げた姿で区別がつくなら「救助を待っている人が救助ヘリだと勘違いして絶望する」なんてことはないはずだ。こうした「報道のヘリがうるさい」と「救助待ちの人が絶望する」という明らかな矛盾がありながら、両者ともに「正論」などと言われているのである。

 また「報道ヘリが救助ヘリの邪魔をする」という話もおかしい。

 報道ヘリは俯瞰的な映像を撮るために、基本的には極めて高い位置を飛んでいる。対象にズームするときも、高性能なカメラを使っており、低いところには降りてこない。高いところを飛べば飛ぶほど、音は小さくなる。

 法的には市街地などの人口密集地では地上300メートル、それ以外では150メートル以下で飛行することはできない。もちろん、救助のためのヘリやドクターヘリなどは対象外である。

 なお、実際の被災地ではもっと高所を飛んでいるようで、2015年に発生した鬼怒川の決壊により起きた水害で、NHKが救助中のヘリを撮影していたところに、テレビ朝日のヘリが入り込むように映り、ネットでは「テレ朝が救助作業の妨害をしている」と騒がれたが、実際には極めて高い場所からNHKが撮影していたことによる圧縮効果であり、テレビ用カメラの高い性能を印象づけた。

 そもそも、被災地での活動においては、被災地周辺のヘリコプターは共通波を用いて常に連絡をとりあい、お互いに邪魔にならないような円滑な移動に役立てているのである。

ドローンも「物資投下」も論外だ

 「被災地の撮影はドローンで十分だ」などというのは論外である。ただでさえ多くのヘリが飛び交う被災の現場に、1、2メートルという小さなドローンが飛んでいたら、ヘリにとってはそれはほとんど見えない豆粒のような障害物でしかない。

 基本的にドローンは、

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