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大リーグ7月24日開幕 浮き彫りになった選手会と機構・経営者の根深い対立

試合数では機構・経営者陣営、年俸では選手会が主張に沿う成果を得たが、火だねは残る

鈴村裕輔 名城大学外国語学部准教授

スペイン風邪、第2次世界大戦を以来の異常事態

 このように、大リーグは新型コロナウイルスで停滞する球界の雰囲気を一掃するためにも、様々な努力を行っている。

 ただし、大リーグがこうした取り組みを行うにはある理由がある。それは、2020年のシーズンが、1876年のナショナル・リーグの発足以来の大リーグの歴史の中でも、かつてない危機的な状況にあるからだ。どういうことか。

 たとえば公式戦の試合数。大リーグの公式戦が60試合となるのは、ナショナル・リーグのみであった1877年と1878年のシーズン以来の少なさだ。当時、連盟に所属したのは6球団で、現在の2リーグ30球団とは組織、規模の面で大きく異なることを考えると、明らかに異常事態である。

 1918年から1920年にかけて、世界的にスペイン風邪が流行した際はどうだったか。感染拡大に伴い、ボストン・レッドソックスとシカゴ・カブスによるワールド・シリーズを繰り上げ開催し、例年よりも1カ月近く早くシーズンを終了したが、各球団は公式戦の打ち切り前に123~129試合を行っている。

 また、1933年から続くオールスター戦は、これまで第2次世界大戦による米国内の旅行移動制限により中止となった1945年を除き、毎年行われてきた。まさしく75年ぶりの異常事態である。

 こうして見ると、2020年に大リーグが置かれた状況は、世界で約50万人が死亡したと推計されるスペイン風邪や、米国が大西洋と太平洋の二方面で激しい戦いを繰り広げた第2次世界大戦のときよりも厳しいものと言わざるを得ないのである。

拡大Andrey_Popov/shutterstock.com

労使交渉の早期の妥結が予想されたが……

 それでは、かつてない危機的な局面を迎え、大リーグ機構・経営者と選手会はどのような交渉を行ったのだろうか。

 3月下旬、両者は今季の年俸を試合数に比例した日割りとし、公式戦の試合数が削減されても1年を通して大リーグ出場枠ないし故障者リストに登録された選手は、通常の1年に相当する大リーグの在籍期間(サービスタイム)を得られることで合意している。

 この時点では、公式戦の開幕日を巡る労使の交渉は、早期に妥結することが予想されていた。選手にとって重要なサービスタイムの扱いで、経営者側が譲歩したからだ。

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筆者

鈴村裕輔

鈴村裕輔(すずむら・ゆうすけ) 名城大学外国語学部准教授

1976年、東京生まれ。名城大学外国語学部准教授、法政大学国際日本学研究所客員所員。法政大学大学院国際日本学インスティテュート政治学研究科政治学専攻博士課程修了・博士(学術)。専門は比較文化。主著に『メジャーリーガーが使いきれないほどの給料をもらえるのはなぜか?』(アスペクト 2008年)、『MLBが付けた日本人選手の値段』(講談社 2005年)がある。日刊ゲンダイで「メジャーリーグ通信」、大修館書店発行『体育科教育』で「スポーツの今を知るために」を連載中。野球文化學會会長、アメリカ野球愛好会副代表、アメリカ野球学会会員。

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