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[43] 「感情」や「通念」で切り崩される人権保障

名古屋地裁で出された2つの判決を批判する

稲葉剛 立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科客員教授

一部の政治家が生活保護バッシングを主導

 田村智子議員(日本共産党)が、各地の福祉事務所において相談に来た人を追い返す「水際作戦」が依然として行われているという問題に触れた上で、こうした対応の背景に「生活保護は権利である」という認識を国や自治体が培ってこなかったという問題があると指摘。過去に一部の政党や政治家が「バッシングとも言える生活保護への敵意、侮辱」を煽ってきたことが、生活困窮に陥っても保護申請をためらわせる「重たい足かせ」になっていると批判したのである。

 その上で、田村議員は安倍首相に対して、「生活保護はあなたの権利です」と呼びかけていただきたいと迫ったのだ。

 安倍首相は、この呼びかけに応える前に、「『一部の政党が生活保護に対して攻撃的な言辞を弄している』という趣旨の話をされたんですが、もちろん、それは自民党ではないという事は、確認しておきたい」と答弁。

 田村議員は、先ほどはあえて名前を出さなかったが、民主党政権時に生活保護の利用者が増加した際にバッシングを主導していたのは、自民党議員であると反論した上で、改めて制度利用の呼びかけをしてほしいと要請。

 これに対して、安倍首相は「文化的な生活をおくる権利があるので、ためらわずに(生活保護を)申請してほしい。われわれもさまざまな機関を活用して国民に働きかけていきたい」と、珍しく明瞭な答弁を行った。

 総理がこのように答弁した以上、政府は早急に生活保護の利用を呼びかける広報を実施すべきである。厚生労働省はテレビやネットで動画を活用した発信をしてほしいと私は願っている。

 安倍首相は自民党議員が生活保護へのバッシングに手を染めたことは否定したが、2012年に芸能人の親族が生活保護を利用していたことがきっかけとなって、バッシングが巻き起こった際、バッシングの中心にいたのは、片山さつき参議院議員を中心とする自民党の国会議員であったことは明白な事実である。当時、片山議員は「生活保護を受けることを恥と思わないことが問題」と繰り返し発言し、生活保護の制度と利用者へのマイナスイメージを広げることに成功した。

 そして、2012年12月、自党の議員が主導した生活保護バッシングに乗っかる形で、「生活保護の給付水準1割カット」を政権公約で掲げた自民党が衆議院総選挙で大勝。政権復帰した直後の2013年1月、第二次安倍政権は過去最大の生活保護基準の引き下げを強行したのである。

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筆者

稲葉剛

稲葉剛(いなば・つよし) 立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科客員教授

一般社団法人つくろい東京ファンド代表理事。認定NPO法人ビッグイシュー基金共同代表、住まいの貧困に取り組むネットワーク世話人。生活保護問題対策全国会議幹事。 1969年広島県生まれ。1994年より路上生活者の支援活動に関わる。2001年、自立生活サポートセンター・もやいを設立。幅広い生活困窮者への相談・支援活動を展開し、2014年まで理事長を務める。2014年、つくろい東京ファンドを設立し、空き家を活用した低所得者への住宅支援事業に取り組む。著書に『貧困パンデミック』(明石書店)、『閉ざされた扉をこじ開ける』(朝日新書)、『貧困の現場から社会を変える』(堀之内出版)等。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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