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ソーシャルディスタンスで楽しむ せせらぎ散歩

【8】富士の雪解けに潤う「水の都・三島」で川と親しむ

沓掛博光 旅行ジャーナリスト

せせらぎ散策に心洗われる

 池から湧き出た水と、池に続く「せりの瀬」「中の瀬」「はやの瀬」といった瀬と呼ばれる一帯からの湧水が合流して源兵衛川となり、街中を南下する。せせらぎ散策が楽しいのは、この源兵衛川に沿ったルートである。

拡大湧水が勢いよく流れ出ている「中の瀬」(筆者撮影)
 三島市観光協会の山口賛事務局長(64)によると、このルートは、三島駅を起点にして、源兵衛川の中に設けられた「川のみち」と呼ばれる飛び石伝いに歩いたり、川沿いの小道を行ったりと、変化に富んでいる。途中から下田街道に出て、三嶋大社などを参拝した後、桜川沿いを進み、湧水が噴き出す白滝公園などを巡って三島駅に戻るもので、全体で約5キロ、ゆっくり歩いて3時間ほどの散策だ。「親子連れや熟年のご夫婦など、幅広い層の方が楽しんでいますね」という。

 楽寿園の湧水は、この源兵衛川と、もうひとつ“宮さんの川”の名で親しまれている蓮沼川に分かれて南下する。

 源兵衛川は、全長約1・5キロ。市内を南下して中郷温水池に注ぐ。湧水の低い水温を、この池に貯めることで高め、ここから田畑などの灌漑に活用してきた。農業用水路の役目を担いながら、今日では、都市の生活空間を文字通り潤す命の水脈にもなっている。なお、三島市などの資料によれば、用水の歴史は、室町時代の豪族・寺尾源兵衛が灌漑用に小浜池から引いたのが始まりとされ、川の名もここからきているという。

 楽寿園の南口を出て左に道をとり、すぐに右折し、源兵衛川にかかる小さな芝橋を渡ると、遊歩道の起点に立つ。澄んだ水が勢いよく流れ、見ているだけで気持ちまでも洗われそうだ。“毎日こうした流れを見られる三島市民は幸せだな”と、思わず心の中でつぶやいてしまった。

かつては汚染で「死の川」に

 しかし、遊歩道の入り口に掲げられた案内板を見ると、この清流は多くの人の手によって蘇ったものであることを知る。

 案内板には、昭和30代後半の源兵衛川を紹介する写真がある。写し出された当時の川面は、よどんでごみが浮いており、今、目の前で見ている川とは別物の、死んでいるような痛々しい姿だ。これは、ゴミが日常的に捨てられ、生活雑排水が流れ込んだ結果であると記されている。富士山の伏流水も形無しである。

 加えて、経済活動の進展に伴い、上流部に進出した企業が

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筆者

沓掛博光

沓掛博光(くつかけ・ひろみつ) 旅行ジャーナリスト

1946年 東京生まれ。早稲田大学卒。旅行読売出版社で月刊誌「旅行読売」の企画・取材・執筆にたずさわり、国内外を巡る。1981年 には、「魅力のコートダジュール」で、フランス政府観光局よりフランス・ルポルタージュ賞受賞。情報版編集長、取締役編集部長兼月刊「旅行読売」編集長などを歴任し、2006年に退任。07年3月まで旅行読売出版社編集顧問。1996年より2016年2月までTBSラジオ「大沢悠里のゆうゆうワイド」旅キャスター。16年4月よりTBSラジオ「コンシェルジュ沓掛博光の旅しま専科」パーソナリィティ―に就任。19年2月より東京FM「ブルーオーシャン」で「しなの旅」旅キャスター。著書に「観光福祉論」(ミネルヴァ書房)など

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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