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東京五輪延期で日本がするべきはIOCへの異議申し立てだ

「商業主義」「国家主義」を脱し「多様性」「共生」「平和」を掲げる五輪をめざして

徳山喜雄 ジャーナリスト、立正大学教授(ジャーナリズム論、写真論)

日本は「スポーツ植民地」か?

 昨今の五輪は、冒頭で述べた「国家主義」と「商業主義」に席捲されている。商業主義の元凶は、巨額のテレビ放映権料であろう。

 国際オリンピック委員会(IOC)収入の7割超を占めるのがテレビ放映権料で、その半分以上は米国のNBCテレビが払っている。たとえば、NBCは東京五輪までの夏冬4大会の放映権料を43億8000万ドル(約4700億円)で取得している。

 このような背景から、民間放送局であるNBCテレビ1社が五輪の開催時期や競技の実施時間までもコントロールする状況が生まれている。五輪は本来、気候のいい春や秋に開催するのがのぞましい。だが、春と秋は米国内のスポーツイベントが目白押し。五輪が真夏に開催されるのは、視聴率を考えるNBCテレビの意向だ。

 あおりを受けるのは選手たちだ。たとえばマラソンランナーは、信じられないような高温多湿のなか、2時間以上も走り続けなければならない。

 2019年9月、カタール・ドーハでの世界陸上競技選手権大会。女子マラソンは暑さを避けた深夜におこなわれたが、気温30度、湿度70%前後という過酷な環境のため、参加者68人中、大会史上最多の4割にあたる28人が棄権、担架や車椅子で運ばれるという異常事態になった。

 東京の8月はドーハの9月よりもコンディションが悪くなる可能性がある。泡を食ったIOCは急きょ、マラソンと競歩の会場を暑さ対策のために東京から札幌に移した。これは一例に過ぎないが、IOCおよびNBCテレビの「アスリート・ファースト」を無視した「商業主義」以外のなにものでもない。これでは、日本は独立国でなく、「スポーツ植民地」の誹(そし)りを免れない。

つまずきだらけの2020年東京五輪

 振り返ってみれば、2020年東京五輪はなにかとつまずきの多い大会だ。

 メインスタジアムとなる国立競技場の設計は、いったんイラク出身の建築家に決まっていたが、「神宮の森の景観を壊す」「維持費がかかり過ぎる」などの強い異議申し立てが日本人建築家らからあがったため、再コンペとなり、隈研吾氏の設計に替わった。

拡大東京五輪のメイン会場となる国立競技場=2019年12月15日

 大会の顔である公式エンブレムも、劇場(ベルギー)のロゴからの盗用との疑惑が浮上し、選び直しになった。五輪の顔といえる二つに、相次いでケチがついたのである。

 2013年9月、五輪の東京招致が決まったアルゼンチン・ブエノスアイレスでのIOC総会で、安倍晋三首相が演説。東京電力福島第一原発事故後の対応について、「アンダー・コントロール(制御している)」と発言し、地元福島の漁協などが猛反発した。現実には、汚染水ひとつをとっても制御されているとは到底いえず、信憑性が疑われる発言を国際舞台でし、日本の信用を落とすことにもなった。

 日本オリンピック委員会(JOC)の竹田恒和前会長は、

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筆者

徳山喜雄

徳山喜雄(とくやま・よしお) ジャーナリスト、立正大学教授(ジャーナリズム論、写真論)

1958年大阪生まれ、関西大学法学部卒業。84年朝日新聞入社。写真部次長、アエラ・フォト・ディレクター、ジャーナリスト学校主任研究員などを経て、2016年に退社。新聞社時代は、ベルリンの壁崩壊など一連の東欧革命やソ連邦解体、中国、北朝鮮など共産圏の取材が多かった。著書に『新聞の嘘を見抜く』(平凡社)、『「朝日新聞」問題』『安倍官邸と新聞』(いずれも集英社)、『原爆と写真』(御茶の水書房)、共著に『新聞と戦争』(朝日新聞出版)など。

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